現役の外科医として臨床に携わる傍ら、全国各地で医師不足などの医療問題をテーマに講演している埼玉県済生会栗橋病院副院長の本田宏さんが5月28日、さいたま市内で開かれた連合埼玉の政策フォーラムで、日本の「医療崩壊」について語った。本田さんは、米国や英国など先進諸国が高齢化に備えて医師を増員しているのに対し、日本では医師数を抑制していることを批判。「このままでは医療ばかりか日本が崩壊してしまう。医療崩壊を食い止めるのは、医師を含む国民みんなの社会的責任だ」と訴えた。
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日本の医師数は約26万人で、人口1000人当たりで比較すると世界63位にとどまり、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均と比べると、約14万人不足している。このまま推移すると、2020年にはOECD加盟国の中で最下位になるという予測に触れ、本田さんは「日本の医師数について厚生労働省は偏在としているが、そうではなく絶対数が足りない」と指摘。医師が不足する中、特に勤務医は当直を含め36時間連続勤務を強いられるなど、過酷な労働環境に置かれていることを紹介し、「高齢化や医療技術の進歩に伴って医師数を増やしている世界のグローバルスタンダードから、日本は大きく立ち遅れている」と述べた。
「医療崩壊」については、英国がサッチャー政権時代に医療費を抑制したため、手術の半年待ちなどといった異常事態を経験したことを指摘。その反省から、英国では医療費を国内総生産(GDP)比10%を目標に増額し、医学部の定員も50%増にする政策に転換したものの、劇的な効果には至っていないため、「医療は一度崩壊すると、元に戻るまでに相当の年月を要する」と警告した。
また、既に日本よりも人口当たりの医師数が多い米国が、将来の高齢化に備えて医師の増員を図っていることを取り上げ、「今後、団塊の世代が高齢化していく日本では、爆発的な医療需要が発生する。大量の医療難民を出さないために、日本の総医療費を国力に見合うよう、G7(先進7か国)並みのGDP比10%に引き上げる必要がある」と強調した。
財源については、「ガソリン税をはじめとする特別会計や公共事業の無駄遣い、特別会計などの『霞が関埋蔵金』を見直すことで、医療に公的資金を注入することは十分に可能だ」と指摘。その上で、「医療は国民の『命の安全保障』。医療や介護など社会のセーフティーネットを整備することで、国民は安心して経済活動や社会活動に専念できるし、永続的な雇用効果も生まれる。医療関係者はもちろん、国民も医療現場の正しい情報を共有し、日本の医療を立て直すために発想の転換を図り、医療崩壊阻止への決断に踏み出すべき時が来ている」と訴えた。
更新:2008/05/28 20:19 キャリアブレイン
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