東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

公務員改革 棚上げ部分が気になる

2008年5月29日

 政府提出の国家公務員制度改革基本法案が修正の上、成立する見通しになった。脱「霞が関支配」へ自民、公明、民主三党が歩み寄った。棚上げになった天下り問題を忘れないでもらいたい。

 「法案が成立せず、現状維持になったら一番喜ぶのはだれか」

 公務員改革法案の審議が進まない中、自民党内の推進派や民主党から漏れていたささやきだ。

 零点の廃案よりも十点でも二十点でも取っておかないと官僚の高笑いを許すだけだ。それどころか、世間に改革姿勢を疑われることにもなりかねない。近づく衆院選を前にそれは得策ではない−。こんな計算が急転直下の合意につながったようだ。

 法案は、省益至上主義を改め、国民のための官僚機構につくり直そうというものだ。至極当たり前のことが衆参ねじれ下で続くにらみ合いによって実現が危ぶまれていた。動機はともかく三党が法成立へ動いたことは評価する。

 焦点は、各省の幹部人事をどう一元管理するかだった。個々の役所の人事権を手放したくない官僚の抵抗を受け、政府案では幹部候補者名簿は各府省が作成するとの骨抜き状態になっていた。修正協議で民主党案に沿って、官房長官が一元的に名簿を作成することになった。官の抵抗を押し戻した点では骨を入れ直したといえる。

 国会議員と公務員の接触制限規定も、野党の締め出しを懸念する民主党の要求通り削除し、代わりに接触記録の情報公開を盛り込んだ。労働基本権に関しては、給与水準などの条件を労使で決められる団体協約締結権を付与する対象拡大の方向を明確化した。

 いずれも与党が大きく譲歩した格好だ。ただ、法案は改革のメニューなどを定めたもので、詳細は個別法での肉付け次第となる。官僚が再び骨抜きを企てぬよう政治主導で具体化作業を急ぎたい。

 見過ごしにできないのが、天下り問題だ。民主党は合意優先の立場から、天下り禁止の要求を棚上げしたが、官民癒着の温床である天下りへの国民の視線は厳しい。

 役人天国が既得権益化した風土はそう簡単に変えられるものではないだろう。法案が成立するといっても、あくまでも改革の一歩にすぎない。

 対立が目立った国会で一致点を見いだしたのは麗しい光景だが、これで各党の仕事が終わったわけではない。詰められない部分があれば、いずれ行われる総選挙のテーマにすべきだ。

 

この記事を印刷する