自民、公明、民主3党が国家公務員制度改革基本法案の修正で合意し、修正案が28日、衆院内閣委員会で可決された。毎日新聞は再三、与野党が一致点を見つけ、法案の欠点を少しでも是正して成立を図るよう求めてきた。今回、歩み寄りが実現し、この国会で成立する運びとなったことを歓迎したい。
中央省庁の抵抗で政府案は骨抜きになったにもかかわらず、なお成立に熱心でなかった自民党が動き始めたのは福田康夫首相が今月中旬、与党に努力を促してからだ。後期高齢者医療制度などに国民の批判が強まる中、政府自ら改革の姿勢を示さない限り、支持の回復は困難だとの危機感が首相にはあったと思われる。
民主党も対決姿勢ばかりを強調し、結果的に改革をつぶしたと批判されるのを恐れたのだろう。だが、基本的な方向性や時期を定めた今回の基本法案が成立すれば、ともかく改革は動き始めることになる。ねじれ状況の下、機能不全を指摘されてきた国会だけに、「やればできる」を国民に見せた意味も大きい。
民主党の主張を大幅に受け入れた修正の内容もおおむね妥当と評価できる。
「省益あって国益なし」と指摘されてきた縦割り人事を、どう内閣に一元化させるか。焦点だった幹部の任用は、政府案の「内閣人事庁」に代わり、内閣官房に新設する「内閣人事局」が担当することになった。
組織としては格下げに見えるが、修正案では官房長官が幹部候補者名簿を作成するようになった点を注目したい。政府案では人事の原案は省庁が作成するため、一元化は骨抜きになっていた。その点では前進であり、官房長官に権限を与えることで政治の責任を大きくしたともいえる。
政治家と官僚の接触の制限規定は削除し、接触した際の記録を作成し、情報公開する措置を講じるよう修正された。政・官接触の制限は「現状では不可能」との指摘もあった。まず透明化を重視したのは現実的な対応と見ていいだろう。
与野党が一致せず、残した課題もある。公務員の労働基本権の拡大もその一つで、前向きに検討する姿勢は記されたが、事実上の先送りといっていい。
早期勧奨退職の慣行や天下りをどうするかという問題も、公務員の定年を「段階的に65歳に引き上げることについて検討する」と記すのみで、具体的には触れられなかった。天下り問題は改革の核心であり、次期衆院選の大きな争点となろう。各党とも、どう対処するかをきちんとマニフェストに書き込んでもらいたい。
今回の修正案には「政治主導の強化」との文言も盛り込まれた。公務員制度改革は、これまで官僚組織に頼ってきた政治家の改革でもある。それを忘れず、各党は具体的な制度設計作りに取り組んでいくべきだ。
毎日新聞 2008年5月29日 東京朝刊