試運転中の使用済み核燃料再処理工場がある青森県六ケ所村の日本原燃の核燃料サイクル施設直下に、これまで未発見だった長さ十五キロ以上の活断層が存在する可能性が高いと渡辺満久東洋大教授(地形学)らが指摘している。
教授らは、この活断層が太平洋を北へ延びる「大陸棚外縁断層」とつながっていれば、マグニチュード(M)8級の地震が起きる恐れがあるとして、耐震性を再検証すべきだと主張している。専門家の指摘には無視できない重みがあろう。
しかし原燃は「再処理工場敷地の半径約五キロ以内に耐震設計上考慮すべき活断層がないことを確認した」と、教授らの見解を真っ向から否定した。大陸棚外縁断層は古い断層で、国の原発耐震指針の評価対象外という。施設の耐震安全性は、新潟県中越沖地震とほぼ同じM6・9の直下型地震を想定し、十分に確保しているとしている。
六ケ所村には、核燃料再処理工場のほか、ウラン濃縮工場や低レベル放射性廃棄物の埋設センターなど原燃の施設が多数立地している。原燃が想定した規模以上の直下型地震で施設が破壊されれば、被害は計り知れない。再処理工場の操業がストップすれば、日本の核燃料サイクル政策にも大きな支障が出るのは確実だろう。
中越沖地震では、想定を上回る揺れが観測され、東京電力柏崎刈羽原発が被災したことを忘れてはならない。原燃は専門家の指摘を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。実際に活断層の存在を確かめずに、住民の不安を解消することはできない。
中越沖地震をきっかけに全国の原子力発電所で、あらためて安全性評価が行われた。その結果、活断層が原発直下にあることが判明したり、活断層の長さを修正するケースが続出し、想定される地震の揺れの強さ(基準地震動)は最大約一・六倍に引き上げられた。
柏崎刈羽原発では、周辺の活断層などを調査して安全性の見直しが行われ、基準地震動は最大約五倍に引き上げられた。一挙に五倍とは、それまでの耐震想定の甘さを物語っている。国内の原発でも最大数値だ。
東京電力は「従来の地震動は策定した当時の方法としては妥当だったが、今からすれば不十分だった」と説明している。国や電力会社は耐震安全性は確保されていると繰り返してきたが、今回の例を教訓に見直しは柔軟でなければならない。
原燃も、かたくなな態度を改め、科学的な検証作業を急ぐべきであろう。
アフリカの経済開発の進め方を協議する「アフリカ開発会議」が二十八日から三日間、横浜市で開かれる。日本が国連、世界銀行と共催で一九九三年から五年ごとに開いている会議は四回目で、過去最多の約四十カ国から首脳クラスが出席する。
アフリカには石油やプラチナをはじめ地下資源が豊富で、カカオなど農産品も多い。これらの価格上昇で過去三年間の平均経済成長率が5%以上という国が二十三もある。ソマリアやスーダンなどを除き全体としては政情も落ち着いてきている。アフリカは変わりつつあるが、一方で国連機関の国別豊かさ統計で最下位から数えて二十四番目までをアフリカの国が占めるなど、貧しさも抱えたままだ。
資源や経済発展に着目して中国などがアフリカ外交を活発化させており、日本政府も今回の会議には一層力を入れる。会議ではアフリカの成長持続へ日本企業の投資を呼び込む方法などを議論する。福田康夫首相は政府開発援助(ODA)の倍増、日本企業のアフリカ進出を促すための投融資制度創設などを表明する予定だ。穀物価格高騰を受けた緊急支援や、農業技術面での協力策なども示す。
だが、経済成長を続ける国でも発展はまだ始まったばかりであり、今も成長の糸口がつかめない国もある。支援にはそれぞれの事情に合わせて自立を後押しし、発展の芽を育てる視点が大切だろう。日本企業進出は雇用を生み出すだけでなく現地の工業基盤育成にも役立ち、有効な手段といえよう。
福田首相は首脳級全員との個別会談を予定しており、既に二十七日からマラソン会談が始まっている。日本がアフリカ諸国と経済関係を拡大していく基盤として、各首脳と信頼関係を深めることが重要だ。
(2008年5月28日掲載)