「介護報酬があまりにも低過ぎて、事業所の経営努力ではもう限界」−。全日本民主医療機関連合会が取り組んでいる「介護保険の緊急改善アピール」に、全国の事業所が悲痛な訴えを寄せている。介護現場の深刻な状態を打開するために、民医連は「2009年度の改定を待たずに、国は介護従事者への十分な給与保障を可能にする介護報酬の引き上げや利用者負担の軽減策などを早急に講じるべき」と訴えている。
民医連は、▽介護報酬の引き下げが事業所の経営を圧迫している▽厳しい賃金・労働条件で介護の担い手が大幅に不足している▽負担増や給付抑制で必要なサービスの利用が困難になっている−などとして、昨年10月に同アピールを発表。これまでに全国19都府県の500を超える事業所が賛同している。
事業所の意見を見ると、「介護報酬が低いため、労働に伴った対価を職員に支払えない。事業の存続が危ぶまれている」(宮城県)、「低い介護報酬の状態が続けば、経営が成り立たず、制度が崩壊する」(千葉県)、「努力しても赤字が続き、銀行などへの返済が厳しい上に経費は上昇し、破産寸前」(神奈川県)、「現状の介護報酬で運営していくのは非常に困難。介護業界はボランティア精神のみでやっていける事業所しか残らず、今後の発展はない」(福岡県)など、介護報酬の引き上げの要求が相次いでいる。
また、「職員の確保が困難。現場は介護の担い手がなければ存続できない」(長野県)や「ヘルパーが集まらない。人手不足のために制度が崩壊してしまう」(大阪府)、「ヘルパーの確保に苦しんでいる。このままでは事業の継続が困難」(兵庫県)など、人材の確保に関する声も多い。
利用者については、「重い費用負担から利用を減らすことを余儀なくされている事例を多く抱えている。必要なときに必要なサービスを利用できるような制度でなくてはならない」(山形県)や、「制度は高齢者が安心して生活できるようにするために導入されたはずだが、どんどんサービスが限定されている。必要なサービスを受けられないようでは制度の意義が問われる」(東京都)など、負担の軽減を要求する意見が寄せられている。
このほか、「制度をつくる人は自分たちが介護される立場になったときのことを考えるべき」(山形県)や「厚生労働省の職員は、机上の空論ではなく、一定の期間、民間の介護保険施設での研修を義務として受けるべき」(宮崎県)など、政治や行政に対する不信感を表わす意見もある。
民医連では「高齢者福祉はかつて全額公費で賄われていた。しかし、介護保険制度の下で、国の負担割合は4分の1にまで減っている。制度における国の負担を大幅に増やし、抜本的な改善を図るべき。無駄な公共事業などを改めれば、財源を確保できる」と強調している。
更新:2008/05/26 18:28 キャリアブレイン
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