外務省軍縮不拡散・科学部の中根猛部長(大使)はこのほど毎日新聞と会見し、クラスター爆弾禁止条約の08年中の締結を目指す軍縮交渉「オスロ・プロセス」が、不発率の極めて低い「最新型」だけを除いて事実上「全面禁止」する案でまとまりつつある点について「流れができているからといって、一気に動くことはできない」と賛同に強い難色を示した。現有爆弾の廃棄に多額の費用がかかる点や安全保障上の懸念を理由としている。
オスロ・プロセスがアイルランド・ダブリンで開いている会議について、交渉責任者の外務省幹部が見解を述べるのは初めて。
会議では、日本は「最新型」より格段に不発率の高い「改良型」の堅持を主張。少数派となっている。
中根部長は「改良型」について「ひとくくりにダメだとする議論には乗れない」とし「最新型」だけを例外にする主流派の見解について「(日本の)現有のものはすべて廃棄することになり、費用はかさむ。一気に代替整備するのは現実的に難しい」と述べた。
仮に予算があっても「費用があれば代替(兵器)に乗るという単純な話ではない」とし、「安全保障上の議論を捨てるわけにいかない」と防衛上の懸念も理由にあげた。
ただ、日本が孤立する可能性については「それはないように配慮したい」と述べ「会議でネガティブな発言をしない」と、主流派と一定の妥協をする可能性にも言及した。
しかし、ダブリン会議で条約案が採択されても署名は今年12月の予定で「束縛されるわけではない。署名まで時間はある」と発言。引き延ばし戦術もありうることを示唆した。
政府は国会でクラスター爆弾の整備費用は陸上・航空自衛隊で計276億円と答弁した。防衛上の秘密から保有数は公表していないが、空自が持つ最も不発率の高い「旧式」だけで砲弾数で数千個と推定されている。他に「改良型」は保有し、「最新型」はない。
福田康夫首相は23日、クラスター爆弾について「もう一歩踏み込んだ対応が必要」としたが、部長は「官邸から明示的な打診はない」とした。【鵜塚健】
毎日新聞 2008年5月28日 15時00分(最終更新 5月28日 15時00分)