ホームページ講義 「真剣に考えてみようエネルギー問題」
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4.いろいろなエネルギー源
 1)石油
 2)石炭
 3)天然ガス
 4)水力

4.いろいろなエネルギー源

1)石油
 改めて言う必要は無いかも知れませんが、石油を利用する上での長所、短所を整理したいと思います。
 【石油の長所】
 (1)液体であるため使いやすい(供給、輸送の点で有利)
 (2)点火や連続燃焼が容易
 (3)単位体積あたりの熱発生が大きい(エネルギー源、エネルギー貯蔵の点で優れている)
 (4)灰がほとんど出ないので後処理に困らない
 (5)燃料だけでなく工業原料など用途が広い
 (6)エネルギー源として安い
 (7)石炭に比べるとCO2(二酸化炭素)放出が少なく、SOx(硫黄酸化物)も少ない
 (8)資源として豊富(であった)
 【石油の短所】
 (1)資源としての枯渇が懸念される
 (2)産油国に地域的な偏りがあり、政情によって供給に問題を生じることがある
 (3)燃焼させた際のCO2排出が大きい
 (4)硫黄分を含むことがあり、SOxが発生する(酸性雨、人体(肺)への直接影響などが問題)
 (5)燃焼温度が高いとNOx(窒素酸化物)が発生する(酸性雨、人体(肺)への直接影響などが問題)
 (6)重要な資源であるため、確保や価格コントロールで国際問題・紛争の原因となる
 (7)(2)などの原因により価格変動が大きい

 これまで新たな油田発見が続いている間は短所の(1)が無く、地球温暖化が問題にされていなかった頃(1980年代以前:IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の組織が1988年)には、(3)が無く、また石油危機(1次オイルショック1974年、2次オイルショック1979年)の前までは(2)、(7)が無く、まさにエネルギー源の主役としてゆるぎない地位を占めていた理想の物質だったわけです。また、石油を使った火力発電は、熱効率も42.5%まで高められ、現在でも電源設備容量(実際に発電した電力量ではなく、現存する発電所の定格発電量の合計)では、25.2%(1996年)と最大です。
 しかし、2回の石油危機を経て、資源としての枯渇、CO2排出が問題とされるに及んで、現在では省石油、脱石油社会への変革が望まれます。
 前のページで書いていますように、日本のエネルギー源として石油依存度はかなり高く(一次エネルギー53.6%、石油火力発電比率21%、消費量もアメリカに次いで2位)、おまけに中東依存度も非常に高いのが実状(1999年度で84.6%:通産省「エネルギー生産・需給統計月報」または、石油連盟ホームページ)です。1970年頃に中東依存度80%であったものを2度のオイルショックを経て約65%(1985〜1988年)にまで落としていたのが、1997年以降再び80%を上回っています。このままの状態が続けば2020年頃に大きな石油ショックが来たなら(これより前に来るかも知れませんし、あるいは後かも知れませんが)、日本の産業、経済が大打撃を受けることが心配されます。

 また、COP3での二酸化炭素排出削減目標である「2008年〜2012年に1990年の6%減」という値は、1998年で既に6%増加(景気の低迷に助けられているためこの値で収まっています(日本エネルギー経済研究所発表、データは省エネルギーセンターのHP参照))している現状から考えて、このままの石油依存体質のままでは到底達成不可能と思われます。積極的対策をとらねば2010年に21%増という政府見通しも出されています(平成9年11月、地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議)。

2)石炭
 石炭は、石油に主役の座を明け渡すまでは船舶、蒸気機関車に使われていたように、エネルギー源の中核であり、石炭より抽出される石炭酸(フェノール)を出発点として合成化学原料の中心にもなっていました。資源としても現状の消費量であれば石油よりもかなり豊富です(講義前ページ)。しかし、石炭は「炭素そのもの」であることから、発電用や燃料として燃やした場合、原理的には、全てが二酸化炭素(CO2)に変りますのでCO2の発生が最も多いエネルギー源となります。また通常、石油よりも多くの硫黄分を含み、SOxを大量に発生させます。環境保護の観点からすると、石炭の使用は、石油の使用以上に抑制する必要があることになります。

 東欧諸国や中国は石炭の使用が多く(石炭消費量は中国が1位で世界の29.0%、2位がアメリカで22.4%、この2国で世界の半分を消費しています(BP Statistical Review of World Energy 1996))、酸性雨を引き起こしている等のニュースが取り上げられていますが、日本でも発電量に占める石炭火力の割合が14.2%、アメリカは何と53%、ドイツ55%、イギリス42%と軒並み高い値になっています(フランスは原子力が約8割のため、石炭火力比率は、わずかに6%です)。中国、アメリカ、ドイツ、イギリスとも石炭の埋蔵量あるいは生産量が多く(確認可採埋蔵量:1位旧ソ連(23.4%)、2位アメリカ(23.3%)、3位中国(11.1%)、4位オーストラリア(8.8%)、5位インド(6.8%)、6位ドイツ(6.5%)と続いています。出典:世界エネルギー会議Survey of Energy Resources (1995))、ほとんど自国産の石炭が利用できる国ばかりです。ちなみに、資源に乏しい先進国であるフランスは、石炭、石油ともに脱却して発電電力量で原子力80%という構成をとっています。

 CO2、SOxという環境負荷の最も高い石炭ですので、資源が比較的多く存在すると言ってもこれ以上の利用拡大は止めるべきと思われます。むしろ、縮小させる方向に移行するのが良いでしょう。また、あまり知られていないことですが、石炭の場合に非常に重要なこととして、
 (1)微粉塵の放出
 (2)放射能の環境への放出  の問題があります。
(1)は、石油でも放出されますが、石炭の場合、圧倒的に多くなります。石炭の燃焼時に飛散可能な灰分(フライアッシュ、未燃焼炭素分を含んでいる)が発生します。通常は電気集塵機やフィルターで除去されますが(フライアッシュは10mg/m3以下とされています)、10ミクロン以下の微粒子がある程度通過しますし、このような対策の十分に行われていない発電施設(中国など、アメリカでもかなり存在)では大量に煙突から放出されています。このフライアッシュ中には、石炭のタールに由来する(発癌化合物の横綱と言われる)ベンツピレンが多く含まれており、石油、石炭のトータルで世界の合計で年間5000トンのベンツピレンが環境中に排出されているとされています(うち、アメリカだけで1300〜2000トン、日本では数100トン)。動物実験によれば、1グラムのベンツピレンで1万匹以上のマウスにガンを作ることができる物質ですので、大変な猛毒です。(ベンツピレン関連の出典:永田親義 著「ヒトのガンはなぜ生じるか」講談社ブルーバックスB684(1987年))
 アメリカの天然資源保護協議会(NRDC)の1996年の報告では、石炭、石油(特にディーゼルエンジンからの排出)(また、天然ガス、木材からでもわずかに放出されます)による微粉塵のため、全米で毎年10万人がこの影響下で死亡(主として肺ガン、喘息と心臓病)しているという分析が出されています。なお、アメリカの石炭火力発電は、このうちの1/3、つまり毎年約3万人の命を奪っているとの試算です(NRDC報告を引用した本:Max Carbon著 「Nuclear Power: Villain or Victim?」 Pebble Beach Publishers (1997年))。
 また、フライアッシュは、燃料中に塩化銅、塩化カリウム、塩化水素、クロロベンゼン、クロロフェノールなどの塩素化合物を含むと(実際に石炭中には塩素が0.09%含まれる:L.Stieglitzら、Chemosphere誌、16巻(1987))ダイオキシンを生成することが知られており、除塵が不完全な場合には大きな問題となります(塩化ナトリウム、塩化カリウムについては、ほとんど生成しないという報告もありますが、上記の他の物質では確認されています)。

(2)は、石炭中に含まれるウランやトリウム化合物から、放射性のラドンが放出されることを意味しています。石炭中のウラン含有量は、米国産の平均で1.6ppm、また、トリウムは2.01ppmとされています(N.Y.Lim, IEA Coal Research (1979))。大型の石炭火力発電所では、年間330万トンの石炭を消費するとされていますので、5.3トンのウラン、6.6トンのトリウムを使うことになります。ウラン1gと永続平衡になるラドンの放射能は、約13000ベクレル、トリウムは約4000ベクレルですから、大型石炭火力発電所からの排気ガス中には、1年間に約950億ベクレルの放射能を持ったラドンガスが放出されるという計算になります。これは、同規模の原子力発電所が1年間に放出する放射性ガス(クリプトンとキセノン:元素の周期律表でラドンの上にあるものなので、化学的、生物学的な効果・影響はほぼ同じと考えてよい)の70倍以上にあたります(四国電力伊方発電所の平成8〜11年の希ガス平均放出データの1基あたりの換算値)。放射性希ガスは、人体への吸収・蓄積がほとんど起こりませんので、この値が危険とは思われませんが、原発よりも多いというのはあまり知られていないのではないでしょうか。

3)天然ガス




(ただいま工事中です)





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