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エネルギー:シティーグループ、バンク・オブ・アメリカが石炭採掘に融資(全訳記事)
2007/10/14

【ワシントンIPS=アビッド・アスラム、10月2日】

 石炭産業について米国の環境保護活動家は、環境に甚大な負荷を与えるとして、かねてより反対しているが、今2つの大銀行が、炭坑開発に積極的に融資しているとして、非難されている。

 熱帯雨林アクション・ネットワーク(RAN)が10月2日に発表した新しいキャンペーンで、シティーグループとバンク・オブ・アメリカが標的になっているのだ。

 石炭燃料で世界をリードし、温室効果ガスである二酸化炭素の主たる排出国であるのはインドと中国だが、両国と米国が将来にわたって気候変動の議論をするとき、信頼を得るためには自国での規制が必要である。

 「ゆりかごから墓場まで、石炭はダーティ(有害)だ。」と、RANのグローバル金融キャンペーン理事のレベッカ・ターボタンは言う。

 キャンペーンは、「市井の激しい議論」と株主の両行への質問を喚起したいとしているが、不買運動の呼びかけは計画していない。

 運動を推し進めるために、RANはICCR(「企業の社会的責任に関する多宗教評議会」275余の宗教団体から成る投資ネットワーク)とステップ・イット・アップ(国内各地で行われている地球温暖化に反対する一連のデモ、次回は11月3日)の主催者と連携していく約束をした。

 両銀行は今回のキャンペーンに直接コメントしていないが、IPSの取材に対して、環境には十分配慮していると答えた。

 「シティは顧客、環境団体、株主と共に、気候変動について責任ある強いリーダーシップをとっている。複雑な気候変動問題を解決するために、広範囲にわたる努力を支援してきた。さらにこれからの10年間で、どこよりも多い500億ドルを、地球環境のための努力に拠出することになっている。」とシティのスポークスマン、バレリー・ヘンディは述べた。

 さらに彼女によると、「炭素情報開示プロジェクト」(CDP、株主と企業が運営する独立団体)の評価で、この世界最大の銀行は、温室効果ガス排出規制に尽力したことによって、最高得点を得ているという。シティは2011年までに、同社の炭素排出を10%削減し、さらに「地球環境によい事業に投資し、顧客とともに炭素削減努力を推進していく」約束をした。

 バンク・オブ・アメリカのスポークスマン、アーネスト・アンギラは、米国の燃料供給において石炭は依然として欠かすことができないと語った。

 「現実には、この国で消費される電力の50%は、石炭でまかなわれている。バンク・オブ・アメリカは、環境に害のない代替エネルギーの開発や利用に、積極的に投融資している。」と彼は述べた。

 キャンペーンの運動家たちは、両銀行のしていることは十分でないと言う。

 5月に出されたシティの500億ドルの約束は、「有意義な協力に見えるかもしれないが、1兆2千億ドルという同行総資産の0.2%にも満たない額である。」とRAN側は主張する。

 昨年のみで、シティは風力、太陽、地熱発電など代替技術に融資した額の200倍を「ダーティ(有害)・エネルギー」に融資していると、RANのターボタンは指摘する。

 同様にRANは、バンク・オブ・アメリカが約束するエコ・ビジネス支援や気候変動に関する取り組みを、不十分であると言う。昨年、同行の環境汚染型プロジェクトへの融資は、クリーン代替エネルギー関連への100倍であった。

 RANによると、石炭発電が米国では温暖化の主な原因である。さらに有毒水銀の最大の排出源であり、大気汚染、喘息、生態系破壊の大きな原因となっている。

 石炭は豊富にある。米国はアパラチア山脈と南西部を中心に、200年分の埋蔵量があるとされている。エネルギー需要が伸び、米国の石油輸入依存脱却が迫られる中、石炭が脚光を浴び始めた。

 すでに国内150箇所で、火力発電所の建設が計画されている。シティーグループとバンク・オブ・アメリカは、これら増大する事業者の最大の債権者に列すると、RANは言う。

 RANの見方によると、「この現代の石炭ラッシュによって、年間6億から11億トンの二酸化炭素排出が加わることになる。それは現在議論されているあらゆる気候変動に対抗する手段を、ほとんどすべて無に帰す量である」。新設の火力発電所は50年の寿命がある。

 計画どおり実行されれば、「5年間のうちに、米国の火力発電産業はインドや中国を超える規模になる」。ターボタンは述べる。

 その結果、「米国がインドや中国に環境浄化を求めようとしても、説得力がなくなる」。ステップ・イット・アップの創設者ビル・マキベンは言う。

 キャンペーン始動とともに発表されたRANのレポートには、石炭採掘は毎年何千人もの死者を出しており、エコシステム全体やコミュニティを破壊していると、記されている。

 石炭会社は、よりクリーンで効率的な燃料を開発することによって、炭素排出削減に尽力していると言っている。反対者たちは、将来のエネルギー需要は、クリーンで永続的に供給できる、再現可能な資源に頼らなければならないと主張する。風力、太陽、潮力、地熱などによる発電である。

 「基本的に、私たちにはよりよい選択肢がある。」とターボタンは言う。(原文へ

翻訳=藤井正子(Diplomatt)/IPS Japan浅霧勝浩

IPS関連ヘッドラインサマリー:
南アフリカ:水を汚染する石炭採掘事業
中国:新たな環境汚染対策に金融上の措置を導入
銀行が強化された環境原則を採用
石炭火力発電復権の動き




(IPSJapan)

今回はワシントンIPS のアビッド・アスラムより、石炭採掘と火力発電の再興に際し、世界的な大銀行を相手に始動した環境保護団体による反対キャンペーンについて報告したIPS記事を紹介します。(IPS Japan浅霧勝浩) 資料:Envolverde







石炭産業について米国の環境保護活動家は、環境に甚大な負荷を与えるとして、かねてより反対しているが、今2つの大銀行が、炭坑開発に積極的に融資しているとして、非難されている。 資料:Envolverde







環境保護団体の非難に対してシティグループのスポークスマン、バレリー・ヘンディは「シティは顧客、環境団体、株主と共に、気候変動について責任ある強いリーダーシップをとっている。複雑な気候変動問題を解決するために、広範囲に渡る努力を支援してきた。さらにこれからの10年間で、どこよりも多い500億ドルを、地球環境のための努力に拠出することになっている。」と述べた。 資料:Envolverde




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