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【焦点を聞く】異論許さぬ“サラ金”規制論議に待った

田村謙治・民主党議員「改正貸金業法は日本の競争力を削ぐ」

 グレーの状況を放置してきたのは、ある意味で行政府、立法府の怠慢です。それが2006年1月の最高裁判決で、グレーゾーンは基本的にダメだということになり、グレーがすべてクロになった。それにより、先ほど申し上げたような議論が一切できないような雰囲気になってしまった。

多重債務者救済は金利引き下げよりカウンセリングで

――とはいえ、多重債務者の救済は重要です。上限金利引き下げよりも有効な手段はあるのでしょうか。

田村 謙治(たむら・けんじ)氏

 これ以上、多重債務者を増やさないため一番重要なのは、多重債務者に対するカウンセリングだと思います。当時、貸金業法のあり方を研究していた民主党のプロジェクトチームでは、4件目以降の借り入れの場合には、必ずカウンセリングを義務づけることを提言しました。そのために、カウンセリング機関の全国整備も必要です。
 
 また、無人契約機も問題です。無人契約機が日本中に溢れたことで、非常に借りやすくなった。悪く言えば、借り過ぎ、つまり多重債務に結びつくような環境を野放しにしてしまった。金利をいきなり引き下げるより、まずは無人契約機の設置を制限した方が、借り過ぎを防止できるのではないでしょうか。

――改正貸金業法の施行により、倒産に追い込まれる貸金業者も増えています。法律による規制強化が経済に及ぼす影響については、どのようにお考えですか。

 建設業にしても貸金業にしても、一部に悪い業者は確かに存在します。しかし、多くの業者はまじめにやっているはずです。一部の悪い業者への締め付けを強化するために、業界全体に網をかける事前規制型の行政は、経済全体を萎縮させてしまうのではないでしょうか。
 
 健全な業者が引き続き業務を続けて、頑張れば事業を拡大していける環境を作る必要があります。貸金業の場合は、まずは免許制にして参入規制を厳しくして、金融庁がしっかり監督する。取り締まる時には厳しく罰するというような、基本的には事後規制型にするのが適している。
 
 事後規制型の流れは金融業界全体であったわけですけれども、それが最近、揺り戻しが来ていて事前規制型が過剰になってきている。そうした状況は国際金融市場において、日本の競争力を削ぐ結果をもたらしている。それがひいては、日本経済の発展を阻害することになるのではないかと危惧しています。
 
 今後はこうした視点を持ちながら、どのような規制が良いのか、多面的に検証していかなければならないと思います。

改正貸金業法の見直しでは“推進派”と火花

――改正貸金業法の一部施行から1年が過ぎる来年には、法律の見直しが議論されることになっています。どのように問題提起をしていきますか。

 改正貸金業法が成立した当時は、参議院でも民主党は少数の野党でありましたから、我々が何を主張しても通らない状況にありました。そのため、金利の問題など与党自民党の方針と世論の大勢に同調しなければならなかったわけです。しかし、「施行1年後の見直し」を盛り込んだのには、これまでお話ししてきたような我々の思いがこもっています。ですから、見直し作業が始まったら、しっかりと幅広い観点から議論する場を作っていきたいと思っています。

――法律の見直しを前に今年4月24日、超党派の「多重債務問題対策議員連盟」が発足しました。貸金業法の改正を推進した自民党の後藤田正純議員や森まさこ議員のほか、民主党からも枝野幸男議員らが参加しています。上限金利の見直しなどの動きが出てくることを牽制しているようですが。

 議連の話は間接的にしか聞いていないので詳細は知りません。しかし、上限金利の見直しなどの動きを阻止する意図があるのなら、それは逆に言えば、資本市場における常識的な議論というのが徐々に日本でも出てきたことの裏返しでもあると思います。
 民主党からも議員が参加していますが、まずは民主党内で議論を深めていきたいと思います。今は参議院で第1党になったわけですので、民主党の主張も当時よりはるかに影響力がありますから。

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このコラムについて

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「政策」というと、霞ヶ関の官僚や一部の政治家、これに圧力をかける団体の手で、いつの間にか作り上げられるものだった。だが、そうして出来た法律は当然、私たちのビジネスを縛り、生活に影響する。「政局」を追う新聞やテレビの政治報道では、本当の政策論議は見えてこない。ビジネスの視点から、政策が法律となって世に出るまでの流れを追い、一見暴論とされかねない意見も、あえて世に問う。名付けて「ビジネス・政策道場」。コメントやトラックバックでぜひご意見をお寄せください。

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著者プロフィール

大竹 剛(おおたけ つよし)

1998年日経BP社に入社。「日経マルチメディア」「日経ネットビジネス」を経て2003年から「日経ビジネス」編集部記者

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