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【焦点を聞く】異論許さぬ“サラ金”規制論議に待った

田村謙治・民主党議員「改正貸金業法は日本の競争力を削ぐ」

 グレーゾーン金利での貸し付けなどを禁止する改正貸金業法が成立してから1年半。2007年12月に一部が施行され、2009年末の完全施行を先取りする格好で、消費者金融各社は上限金利を大幅に引き下げたほか、返済能力の審査を厳格化してきた。金融庁は「多重債務者は減った」と法改正の効果をアピールする。
 だが、改正貸金業法で消費者金融だけではなく事業者金融の上限金利も同時に引き下げられたことで、中小零細企業が事業者金融から短期の運転資金を借りることが難しくなっている。原油や材料の価格高騰が続く中で中小企業の事業環境は厳しさを増しており、倒産件数は増加傾向にある。短期の運転資金を事業者金融から借りられなくなったことが、倒産増加の一因であるとの指摘も増えている。
 改正貸金業法の金利規制は本当に正しかったのか。「金利規制は多重債務者問題の解決にはならない」と主張する、民主党内で改正貸金業法のあり方について議論をリードしてきた田村謙治議員に聞いた。

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──上限金利引き下げによる弊害を指摘されていますが、改正貸金業法の何が問題なのでしょうか。

田村 謙治(たむら・けんじ)氏

田村 謙治(たむら・けんじ)氏
民主党衆院議員
1968年生まれ。東京大学法学部卒業後、大蔵省に入省。1993年、ミシガン大学大学院に留学。2002年、財務省退職。2003年、衆院選に初出馬し落選。2004年に繰り上げ当選で衆議院議員に。2005年に2期目の当選を果たす
(写真:大槻 純一 以下同)

 そもそも、貸金業がどうあるべきかは、経済政策としての視点も踏まえて議論すべきです。経済の原則に従えば、当然、リスクが高い対象には高い金利で貸し出すことになります。そうでなければ、貸し出すことができない。それは、資本主義の国では世界共通の常識だと思います。

 しかし、今回の法改正に至る議論を振り返ると、多重債務者を救済するには上限金利の引き下げが第一の解決策であり、出資法の金利を利息制限法の金利まで完全に引き下げるべきだという論調が、早い段階で与党、金融庁、そして世論の大勢になってしまった。上限金利を引き下げれば、多重債務者でも低い金利で借りられるようになるといったことまで、正論として通用していたんです。

 リスクの高い借り手にも低い金利で貸し出せるということは、本来、あり得ないことです。実際、昨年から今年にかけて、消費者金融の貸し出し状況を見ていると、リスクの高い対象には明らかに貸せなくなっている。当然の帰結なのですが、当時はリスクの高い人には金利は高くならざるを得ないということを一言でも言うと、「貸金業者の回し者」のような扱いをされて、一部の特殊な意見として見向きもされなかった。こうした不幸な状況の中で、貸金業法の改正が行われてしまった。

金利規制は消費者金融と事業者金融で区別すべき

――では、上限金利の規制はすべて、撤廃すべきということでしょうか。

 そうではありません。一定の金利制限は必要でしょう。ただし、規制を導入する際は、どのような水準が適正なのか、もっと綿密に議論したうえで、実態に即した制度を導入すべきだと思います。

 例えば、貸金業でも、消費者に貸し出しをする消費者金融と、中小零細企業に貸し出しをする事業者金融があります。当然、この2つは分けて考えるべきです。貸金業と言うと、「サラ金」「ヤミ金」というイメージが広がっており、事業者金融という視点が完全に抜け落ちてしまった。その結果、貸金業者から借りられないために資金繰りに困って倒産してしまった中小零細企業の件数も増えていると聞きます。

 貸金業者の規模も大切な視点です。大手貸金業者は銀行から低金利で融資を受けたり、社債を発行したり、低コストで資金を調達できます。しかし、中小の貸金業者の資金調達先はノンバンクが中心で、調達コストは高くなります。

 上限金利を規制するなら少なくとも貸金業者を4分割して考えるべきです。事業形態で消費者金融と事業者金融の2つ、事業規模で大手と中小2つに分けられたはずです。

――出資法と利息制限法の上限金利の差、いわゆるグレーゾーン金利を撤廃したことについては、異論はありますか。

 グレーゾーン金利は当然、解消すべきでした。出資法と利息制限法で上限金利が分かれている状況は、確かにおかしかった。ただし、金融を業として営むプロの事業者に関して、民法である利息制限法を当てはめる議論には違和感があります。グレーというのではなくて、そもそも出資法自体をどうすべきなのか。金融業をどのように規制するのか。本来、ゼロベースから考えるべきでした。

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このコラムについて

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「政策」というと、霞ヶ関の官僚や一部の政治家、これに圧力をかける団体の手で、いつの間にか作り上げられるものだった。だが、そうして出来た法律は当然、私たちのビジネスを縛り、生活に影響する。「政局」を追う新聞やテレビの政治報道では、本当の政策論議は見えてこない。ビジネスの視点から、政策が法律となって世に出るまでの流れを追い、一見暴論とされかねない意見も、あえて世に問う。名付けて「ビジネス・政策道場」。コメントやトラックバックでぜひご意見をお寄せください。

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著者プロフィール

大竹 剛(おおたけ つよし)

1998年日経BP社に入社。「日経マルチメディア」「日経ネットビジネス」を経て2003年から「日経ビジネス」編集部記者

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