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5 月 27 日 (火)  
5/27(火)20:00更新
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せき止め湖 一部で水抜き
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中国の四川大地震による土砂崩れで川がせき止められて湖のようになっている「せき止め湖」は、一部で決壊する危険性が高まっており、土砂に溝を掘って水を抜く作業が始まっています。
四川大地震の被災地では、せき止め湖が、30か所余り出来ており、決壊する危険性が高まっていることから川をせき止めている土砂に溝を掘って、たまった水を抜く作業を各地で進めています。
このうち四川省北部の平武県にあるせき止め湖では27日午前、幅5メートル、長さが1キロの溝が完成し、せき止められていた泥混じりの水がゆっくりと下流へと流れ落ちていました。
河川を管理している中国水利省では、これまでに7か所で溝を掘るなどして水を抜いた結果、決壊の危険性が低くなったとしています。
また、北川県にある最大のせき止め湖では、軍や武装警察の部隊、およそ600人が、26日から掘削機などを使って溝を掘り続けています。
しかし、規模が大きいため、作業は来月5日ごろまでかかるとしており、中国政府は、本格的な雨期に入る前に作業を終えたいとしています。
一方、新華社通信によりますと、このせき止め湖の下流にある綿陽では、決壊した場合に備えて住民の避難も始まっています。
日本時間の28日午前1時までに住民15万人を安全な場所へ避難させる予定だということで、土石流などの2次災害の発生に備えた対策も進められています。
中国政府の発表によりますと、四川大地震で死亡した人は、日本時間の27日午後1時現在で6万7183人、行方不明者は、2万人余りに上っています。
せき止め湖 5地域で対策必要
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「せき止め湖」について現地の研究機関は、四川省だけで36か所が確認され、このうち5つの地域のせき止め湖は、決壊した場合に大きな被害が出るおそれがあるため対策を急ぐ必要があると分析しています。
四川省成都市にある中国科学院の成都山地災害・環境研究所は、航空写真などを集めたり、現地調査を行ったりしてせき止め湖が出来た場所を洗い出し、危険性を分析しています。
研究所によりますと、四川省の山間部では今回の大地震を引き起こした断層に沿ってこれまでにあわせて36か所のせき止め湖が確認されています。
このうち現在、水を抜くための準備が進められている北川県の大規模なせき止め湖のほか、北部の青川県付近や、平武県付近、安県付近、それに※什(し)ほう県付近のあわせて5つの地域にあるせき止め湖は、決壊した場合に流域の町に大きな被害が出るおそれがあるため対策を急ぐ必要があると指摘しています。
研究所の程根偉副所長は「せき止め湖が決壊した場合、一度に大量の水が流れ出すので破壊力が大きい。またせき止め湖が出来た地域では、土石流や山崩れなど、土砂災害の危険性の高い状態が少なくとも5年以上にわたって続くと予想される」と話し、長期的な対策が必要だという見方を示しました。
※什ほう県の「ほう」はへんが「方」つくりが「おおざと」
医療チームが少年を透析治療
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一方、日本から派遣された国際緊急援助隊の医療チームは、小学校が倒壊してがれきの下敷きになり、いわゆる「クラッシュ症候群」を起こした10歳の少年などに人工透析の治療を行っています。
日本の医療チームは、各地の被災地からけが人が送られてくる成都市の四川大学華西病院を拠点に医療活動を続けています。
このうち人工透析を行う透析室では、臨床工学技士や看護師、日本から同行した通訳のあわせて4人が、中国人のスタッフとともに、およそ70人の患者の治療にあたっています。
患者の多くは、体の一部が長時間圧迫されたことで筋肉の細胞がえ死して腎不全などになる、いわゆる「クラッシュ症候群」を起こし、血液を浄化する人工透析を必要としています。
中には、震源に近い都江堰(とこうえん)で授業中に小学校が倒壊し、がれきの下敷きになってクラッシュ症候群を起こした※梁成ぎょくくん(10)も治療を受けています。
梁くんは小学4年生ですが、49人の同級生のうち、およそ30人が死亡したということです。
梁くんは「日本の医療スタッフはとてもいい人たちで感謝しています。今回助けてもらったので、大きくなったらボランティア活動をしたいと思います」と話していました。
また華西病院腎臓内科の付平医師は「日本はクラッシュ症候群の治療経験が豊富でとても助かっています。いっしょに活動することはわたしたちにとってもいい経験です」と話していました。
透析室では日本の政府やメーカーから贈られた9台の透析器も治療に使われています。
日本のチームの臨床工学技士、佐々木恒太さんは「日本の透析器はコンパクトで使いやすいと好評で、中国人のスタッフもすぐに慣れて使いこなしています」と話していました。
※「ぎょく」は「金へん」に「玉」
ユニセフ専門家 被災児と交流
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ユニセフ・国連児童基金の心理ケアの専門家3人は27日、被災した子どもたちが避難している成都市内の大学を訪れ、子どもたちの心の傷を癒やそうとゲームなどをして交流しました。
成都市内の西南財経大学には、震源地などから、1000人以上の子どもたちが避難していますが、親を亡くしたり、悲惨な場面を目にした一部の子どもは、ふさぎ込んだり、眠れないなど心理的に不安定な状態になっています。
27日は、ユニセフ・国連児童基金の心理ケアの専門家3人が訪れ、子どもたちの心の傷を癒やし、日常的な感覚を取り戻してもらおうと、ボランティアの大学生らとともに輪になってグループを作るゲームをして遊んだり、歌を歌ったりしました。
また、子どもたちは、1人ずつ自己紹介したあと、医者や科学者など思い思いの夢を語っていました。
ユニセフ中国事務所のマルティーノさんは「被災した子どもたちは強いストレスを抱えている。特に親を失った子どもたちについては、社会全体で受け入れて継続的にサポートしていく必要がある」と話していました。
ユニセフでは、一部の子どもについては専門家による長期的なケアが欠かせないとして、今後、専門家チームを作って子どもたちの心理状況について追跡調査を行い、必要な対策を取りたいとしています。
※このニュースは5月27日20時00分時点でのものです。
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