昨年3月13日、高知空港で全日空のボンバルディアDHC8−Q400型機が胴体着陸した事故で、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は28日、機体製造メーカーのボンバルディア社(カナダ)が製造過程で行った修理で前輪格納扉を開閉させるアーム支点部分のボルトを付け忘れたことが事故原因とする報告をまとめ、同社の品質管理体制を強化するようカナダ運輸省に指導を求める安全勧告を同日付で出した。
調査報告によるとボンバル社は平成17年6月16日、同機の組立完了後にランディング・ギアの地上機能試験を実施。その際に前輪格納扉を開閉させるシステムを損傷させ修理を行った。同システムはグッドリッチ社(米国)が製造、通常の工程では仮組立して納入されたシステム一式を機体に取り付けるが、この時の修理ではシステム一式から部品の一部を取り外し、損傷した部品と交換する作業を行ったという。
事故はアーム支点部分のボルトがなかったためにブッシングと呼ばれるボルトの摩耗を防止する筒状の金属製部品が飛び出し開閉操作を妨げて起きたことが直接の原因で、事故調はボルトがなぜなかったのか、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に検査を依頼するなどしてボルトが装着していればつく摩耗や傷の程度について詳しく調べ、製造直後からボルトが装置されていなかった可能性が高いことをつきとめた。機体引き渡し後に格納扉開閉システム周辺の整備は行われていないことから、ボンバル社が機体引き渡し直前に行った修理でボルトをつけ忘れたと結論付けた。
そのうえで「重要な修理にもかかわらず作業手順を示す書類が作成されていなかった」と指摘。修理ではシステム一式を交換する予定だったが、現場の判断で部品だけを交換したことも明らかにし、修理・製造過程の品質管理体制を強化するようボンバル社への指導をカナダ運輸省に求める安全勧告を出した。
■最終報告書骨子
1、前輪格納扉の開閉装置に、早い時期からボルトがなかったと推定
1、製造直後の修理で、ボルトを付け忘れるミスがあったと考えられる
1、必要なボルトがなく、筒状の部品「ブッシング」が飛び出して周囲の部品とぶつかり格納扉が開かなかったことが原因
1、ボンバルディア社の品質管理を強化するようカナダ運輸省に安全勧告
■高知空港胴体着陸事故 平成19年3月13日、大阪発高知行きの全日空1603便(ボンバルディアDHC8−Q400型)が高知空港着陸時に前輪が出ず胴体着陸、乗員乗客60人にけがはなかった。国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は同日、調査官2人を現地に派遣して調査を開始した。事故機は大阪空港で修理後、昨年9月に国土交通省の耐空証明を取得。全日空は今年から大阪〜高知での就航再開を予定していたが高知県が猛反発して撤回。現在も訓練機として使用されている。
■ボンバルディアDHC8−Q400型機 ボンバルディア社製「DHC8」シリーズの最新型。ジェットエンジンでプロペラを回すターボプロップ機で全長33メートル、68〜78席。最高巡航速度はジェット機に匹敵する時速667キロ。客室内騒音低減装置(NVS)を搭載し大幅に振動、騒音を抑えている。国内では、全日空グループと日本航空系の日本エアコミュータが計24機保有し、国産旅客機YS−11型機の後継機として地方路線で運航されている。燃費効率が良くジャンボ機が地上滑走する燃料で大阪〜高知間を飛べる。
■安全勧告 航空・鉄道事故調査委員会の勧告には委員会設置法に基づく国土交通大臣への勧告と国際民間航空条約第13付属書に基づく安全勧告がある。安全勧告は航空安全を強化するためにとるべき措置を他国の航空当局に勧告するもので、勧告を受けた国は勧告した国に対策を報告しなければならない。
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