短大生の妹を殺害し、遺体を切断したとして、殺人と死体損壊の罪に問われた武藤勇貴被告(23)に懲役7年を言い渡した27日の判決は、同じバラバラ事件でも、夫を殺害した三橋歌織被告(33)の懲役15年の判決と比べ、量刑の差が際立つ。両事件とも被告の責任能力に疑問を呈する精神鑑定結果が出るなど共通点は多いものの、歌織被告の判決は完全責任能力が認められ、勇貴被告は死体損壊については「心神喪失で責任能力なし」とされた。判決の差は、どこにあったのか。
2つの事件とも、公判で精神鑑定が実施され、鑑定結果は、殺害、死体損壊のいずれの時点においても「責任能力に問題がある」と指摘していた点で共通していた。また、両被告の判決とも、その鑑定結果を「信用性に疑いを挟む事情はない」(歌織被告判決)、「十分に信頼できる」(勇貴被告判決)と肯定している。
では、なぜ歌織被告が完全責任能力を認められ、勇貴被告は一部無罪となったのか−。それを分けたポイントは、遺体切断時の状況、そしてその時の精神状態の評価にあるようだ。
歌織被告の場合、のこぎりなど切断に必要な道具を購入し準備を整え、切断した遺体を分散して遺棄している。4月28日の判決で、東京地裁の河本雅也裁判長は、これらの点を「犯行発覚を防ぐため」と認定、目的に合う合理的な行動を取っていると判断した。
一方、勇貴被告の死体損壊の方法について、東京地裁の秋葉康弘裁判長は「左右対称に15に分けて解体するなど手が込んだもので、隠しやすくするとか運びやすくするということでは説明できない」と指摘。「別人格を仮定しないと説明がつかない」とした。
歌織被告の判決では、犯行時に幻視・幻聴などの精神疾患を発症していたと認めているが、「幻視・幻聴の内容は被告の祖母などに関係するもので被告の人格からの乖離はない。また(幻視・幻聴が)犯行を指示するようなものではなく、動機の形成に全く関係がない」として、自分の意思で犯行に及んだと指摘。これに対し、勇貴被告の判決では、「怒り狂ったような殺害行為と、非常に冷静な死体損壊行為は、意識状態が変わったと見るべき」として、「死体損壊時は別の獰猛(どうもう)な人格状態にあった可能性が高い」と認定した。
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