どうにも気にくわないことがある。クールビズだ。
ある県庁が初めてクールビズを導入した日のことだった。全職員がノーネクタイになっていた。すべからくネクタイを締めていた前日から、「軍隊的」ともいえる見事な変わりよう。鳥肌が立った。
地球温暖化にストップをかけようという考えには賛同する。ネクタイも上着もいらないのは大歓迎だ。
だが、ノーネクタイを規則化したり、「皆が締めてないから」「外さないと集団の中で浮くから」と迎合する現状は、どれだけすてきなクールビズファッションが登場しようとも、ネクタイを社会が強制した時代と精神的には何ら変わらない。
場に適した服装を「自由に」選ぶのが、本当に円熟した大人の社会だろう。クールビズという言葉から、詰め襟の制服を強制された中学・高校時代を連想するのは、天邪鬼(あまのじゃく)な私だけなのだろうか。【荒川基従】
毎日新聞 2008年5月27日 地方版