政府の教育再生懇談会は一次報告で小学三年生からの英語の必修化を提言した。グローバル化が進むなか、外国語の習得は重要だが、必修化を説く前に現状の分析と環境の整備が先ではないのか。
一次報告は「小学三年生からの早期必修化を目指す」「年三十五時間以上の英語教育を行うモデル校を五千校規模で設置」「英語教科書の質、語彙(ごい)数、分量を抜本的に向上させる」などと英語教育の強化を挙げる。
韓国や中国は日本よりも英語教育に力を入れており、このままでは国際競争に負けるとの懸念や、幼少期から学んだ方が身に付くという意見が後押ししたようだ。
英語教育は学習指導要領の改定で小学五、六年で週一回、必修化される。完全実施は二〇一一年度からだが、本年度中に試作版の英語ノートやCDを約五百五十校に配り、先行して使ってもらう。
学校教育の指針と内容を示す学習指導要領は、中央教育審議会(中教審)の答申に基づいて改定されており、今回提言した教育再生懇談会とは別の組織だ。それでも政府が設けた懇談会の報告だから中教審として無視はできまい。
現場や保護者も、小学五、六年で英語教育が導入される前の「三年から」提言には戸惑ってしまう。「いずれ、中学入試で英語も」と思う人は少なくないだろう。
早期必修化に慎重派からは「まずは日本語をきちんと身に付けるべきだ」との意見がある。日本語で表現できる能力を身に付ける時期に外国語を学ぶことが適切なのか。そもそも習得が可能か。
外国語の習得はその国の文化や習慣を学ぶことも含む。報告をまとめるに際し、懇談会でそこまで広い議論がなされたか不明だ。
日本の英語教育は「会話力」が課題とされ、五、六年での英語教育ではコミュニケーションを重視する。低年齢化を唱える前にまず五、六年での検証は欠かせない。
現場への負担が問題視されている。教員増予算をめぐり文部科学省と財務省で綱引きが続く。
三年からとなれば、人員問題はさらに広がる。英語の苦手な先生が教えることでかえって英語嫌いの児童が増える事態は避けたい。
新学習指導要領改定では、ゆとり教育の検証も、現場の人や予算の手当てもなく、授業時間と内容の増加を決めた。これで学力向上につながるかは分からない。
英語も低年齢スタートだけで身に付くという保証は何もない。
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