政府は27日の衆参議院運営委員会合同代表者会議に国会同意が必要な8機関23人の人事案を提示した。しかし、日銀政策委員会審議委員と預金保険機構理事長の人事案については事前報道があったとして民主党が難色を示したため、提示が見送られた。事前報道があったら人事案の提示を受け付けないという国会のルールには合理性がない。速やかに撤廃すべきだ。
与野党は昨年秋、国会同意人事についての新ルールで合意し、その中に人事が事前に報道された場合は原則としてその人事案の提示は受け付けないことも明記された。その理由として民主党の西岡武夫参院議運委員長は「同意人事を形骸化させてはならない」と述べていた。
わたしたちはこのルールについて(1)事前報道が国会同意人事の形骸化につながるという指摘は根拠に乏しい(2)事前報道のあるなしに関係なく、政府の人事案が妥当かどうかを判断するのが国会の役割である――と主張し、事前報道を規制するようなルールは速やかに撤廃することを求めてきた。
政府は今回、日銀審議委員に池尾和人慶大教授を充て、預金保険機構理事長に永田俊一氏を再任する人事案を27日に提示する方針だったが、この人事が新聞各紙に事前に報道されたため、西岡氏らが強く反発して提示は見送りになった。西岡氏は今回「明らかに人事案件の情報が政府筋から漏れたと判断した。取り決めを政府側から破った」と述べている。
こうした西岡氏の言動は到底納得できるものではない。わたしたち報道機関は人事に限らず、さまざまな取材先から情報を得て、読者である国民に必要なニュースを一刻も早く届けるよう日々努力を重ねている。事前報道がなぜ国会同意人事を形骸化させることになるのか、理解に苦しむばかりである。そもそも事前報道を規制するかのようなルールは筋違いである。
事前報道があるなしに関係なく、衆参ねじれ国会では参院で多数を握る野党の反対で日銀正副総裁人事が迷走を重ねてきた。これ以上、同意人事で混乱を重ねるのは国会の権威を損ねるだけである。