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社説1 合意踏まえ公務員改革を前進させよ(5/28)

 与党と民主党の実務者が国家公務員制度改革基本法案の修正で基本合意した。文言調整を経て28日に最終合意する見通しだ。改革を前進させるために、今国会で確実に法案を成立させるよう求めたい。

 与党と民主党は先週から実務者による修正協議を始め、主張をすり合わせてきた。その結果、政府案に明記した官僚と政治家との接触の制限規定は盛り込まず、民主党案に沿って、接触した場合の記録の作成や情報公開で対応する方向になった。

 政官の接触制限は、法案の目玉の1つである。しかし閣僚の国会対応を補佐する「政務専門官」の新設などの政府案の中身には、自民党内などからも実効性を疑問視する声が出ていた。接触制限ではなく、透明性を高めることで対応するという民主党の考え方には一理ある。

 民主党が求めている定年年齢の65歳への引き上げについても「検討する」と明記される方向だ。民主党案をおおむね取り入れる形で修正協議が進んだが、労働基本権の取り扱いなどを巡り調整が難航した。

 政府案は労働協約締結権を与える職員の範囲拡大を検討するというものだ。民主党は非現業の一般職に協約締結権を認めるよう主張し、併せて政府内に労務を担当する使用者機関を設置するよう求めていた。

 双方の主張の開きは大きいように思えるが、政府案の基になった有識者懇談会の報告書は、一定の非現業職員に協約締結権を与えることを前提にしていた。

 民主党が先月まとめた公務員制度改革の中間報告では、労働協約締結権を付与する職員の範囲などを今後3年程度の時間をかけて検討する方針を盛り込んでいる。

 基本法案は今後の作業スケジュールなどを定めるプログラム法であり、協約締結権を付与する方向で文言調整する余地はあった。

 基本法案には内閣による幹部職員の一元管理や、採用試験改革などの課題も盛り込まれている。いわゆるキャリアシステムの廃止などの問題意識は共通していた。

 公務員制度改革は本来、与野党共同で取り組むべきテーマである。仮に民主党政権ができても、公務員制度改革は避けて通れない。自民、民主両党内に法案を成立させることへの慎重・反対論があるなかで、修正合意で成立への道筋がついたことを評価したい。

 労働基本権問題などの長年の懸案を動かすためにも、今国会で法案を成立させ、具体的な検討作業に速やかに着手することが重要である。

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