昨年1年間に公判前整理手続きが実施された裁判員制度対象事件の公判回数は、平均3.6回(平均審理期間2.1カ月)だったことが最高裁の調査で分かった。実施しない場合と比べ、大幅な短縮になる。裁判員制度では事件の7割が3回以内、9割が5回以内に審理が終わると見込まれており、最高裁は「公判前整理手続きで審理が迅速化され、想定に近い結果になった」と評価している。
最高裁は、昨年1審が終わった被告のうち、裁判員制度の対象となる重大事件で公判前整理手続きが実施された1036人を調査。公判回数は▽3回以下=665人(64%)▽4〜5回=228人(22%)▽6〜10回=126人(12%)▽11回以上=17人(2%)−−だった。
起訴事実を認めた被告609人の公判回数は平均2.7回(平均審理期間1.5カ月)、審理が長期化しがちな否認事件でも平均4.8回(同3.0カ月)となっていた。
これに対し、裁判所法で3人の裁判官での審理(合議)が定められた「法定合議事件」4456件(裁判員対象事件含む)のうち、公判前整理手続きを実施しなかった事件3358件の平均公判回数は4.8回前後。3回以内で終わったのは5割にとどまり、公判前整理手続きによる審理の短縮化の効果が表れた形だ。
裁判官3人が合議する現在の制度と、裁判員制度では評議の形は異なるが、最高裁は「(公判前手続きが実施されれば)公判回数はほぼ同じになるのではないか」とみている。原則、連日開廷のため、それが審理日数となる。
ただ、法曹界の一部からは、期間の短縮化によって審理が不十分になるとの懸念も出ている。最高裁は「公判前整理手続きで法曹三者が十分議論し、適切な争点と証拠を選んで審理計画を立てれば解決できる」と話している。【北村和巳】
【ことば】公判前整理手続き
迅速で集中的な審理のため、初公判前に裁判所と検察官、弁護人が非公開で協議し、争点や証拠を絞り込む手続き。05年11月に導入された。来年5月に始まる裁判員制度の対象事件では必ず実施される。検察側は07年4月から、原則としてすべての裁判員対象事件で実施を請求している。
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