一人の若者が動くたび、千人を超すギャラリーが波打つように揺れた。
二十五日まで開かれた男子ゴルフのマンシングウェアオープンKSBカップ(玉野市、東児が丘マリンヒルズGC)。石川遼選手のツアー最年少優勝(十五歳八カ月)から一年。誕生の地に戻ってきた「ハニカミ王子」が大観衆を魅了した。
初日78と出遅れ、決勝進出が絶望的となった二日目。「遼君、頑張れ」。スタート前から大声援がわき起こり、会場は奇跡を願うファンの熱気に包まれた。グリーン周辺ではパットを打つたび「入れ」の絶叫。石川選手は強気で攻め抜き、67の猛チャージを見せた。
自分の信念を貫き、どんな状況でもベストを尽くす―。石川選手の素晴らしい人間性に触れた。打撃練習場では理想のスイングを求め、真剣に打ち込み。不振だった初日、悔しい感情を懸命にこらえ、丁寧に取材に応じる姿もあった。
強い心だけでなく、さりげない優しさも垣間見た。殺到する女性ファンに押され後ずさりした小さな女の子に気付くと、歩み寄って握手した。
「さわやかで格好いい」「あんな息子がいたら」。観客はそれぞれの立場で好感を持ち、温かいまなざしを注いだ。
結果は、残念ながら三試合連続の予選落ち。厳しい現実だが「試練とは思わない。ゴルフの神様がもっと頑張れと言ってくれている」と石川選手。父の勝美さんも「あきらめる子じゃないんで」と長い目で見守る。
夢へ、真っすぐ立ち向かう十六歳。その姿勢が世代を超えて愛されている。(運動部・飯田陽久)