五輪=柔道全日本選手権が29日開催、微妙に異なる選手の胸のうち
[東京 28日 ロイター] 日本武道館で29日に開催される全日本柔道選手権に出場する井上康生や棟田康幸ら有力選手が28日、都内で会見を行った。同大会は北京オリンピック日本代表のうち唯一決定していない男子最重量級の最後の選考会を兼ねており、「とにかく勝つ」という思いは皆同じだが、その胸のうちは微妙に異なっている。
<内容伴う優勝が求められる井上>
6日の体重別選手権(福岡)で涙の優勝を果たした井上にとって、全日本選手権は北京に向けて乗り越えなければならないもうひとつの壁だ。07年リオデジャネイロ世界柔道選手権大会5位、08年フランス国際5位と国際大会で成績を挙げることができておらず、アピール度では昨年、国際大会で優勝実績を積んだ棟田や石井慧に遅れをとった。この全日本選手権で優勝、それも内容のある優勝でなければ北京への道は開けないと言われている。「体重別選手権を勝ったことで自信がついたし、勢いもあると信じて勝ちに行きたい」。延長戦がなく旗判定に持ち込まれるケースも多い講道館ルールの下で一本勝ちをおさめられるか、壁は低くない。
<内容よりも勝ちにこだわる石井>
一方、内容よりも勝ちにこだわると話したのが石井だ。06年全日本柔道選手権大会に史上最年少で優勝し、今年2月のオーストリア国際100キロ超級で優勝、3月カザフスタン国際100キロ超級でも優勝を果たした若手のホープだが、大殿筋の故障で体重別選手権を欠場しており、この大会にすべてをかける。「悩んだり落ち込んだりしたが、学校の屋上のフェンスの前で心を入れ替えた」。
「試合内容を問われるのはチャンピオンになってから。とにかく勝たないと仕方がない」。試合内容にこだわる先輩が多い中で貪欲(どんよく)に勝ちを狙うという。
<五輪や世界選手権よりも全日本と棟田>
いつも言葉少ない棟田がきっぱりと言い切った。「自分のなかでオリンピックや世界選手権よりも位置付けが高いのが全日本選手権だ」
07年世界選手権無差別級優勝、08年2月のドイツ国際柔道大会100キロ超級優勝と世界大会で実績を残し、北京代表レースでもトップを走っていると言われる棟田だが、全日本選手権では優勝経験がない。170センチの身長は巨人のような外国人選手には武器になっても、それほど背の高くない日本人選手にはアドバンテージとはなりにくい。
「あすの試合のことだけを考えている」日本一の称号とともに代表切符を勝ち取ることができるか。
<プレッシャー少ない鈴木、純粋に勝ち求める>
無差別で行われる全日本選手権には、すでに100キロ級で代表に決定している鈴木桂治も出場する。「日本代表を全日本選手権前に決めたのは初めて。慢心につながらないようにしたい」鈴木には連覇がかかるが「連覇は勝ってから考える」という。
07年リオデジャネイロの世界選手権で、納得のいかない負けを喫した。「あのとき負けてよかった、勉強になった、と言えるのは北京で勝ってから」。
自分の試合結果が100キロ超級の代表争いを左右する可能性もあるが、純粋に勝ちを求めていくという。
(ロイター日本語ニュース 伊賀 大記)
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