赤い羽根は社会福祉事業への募金。緑の羽根は森林活動を支援する募金。どちらも長い歴史を持ち、日本人の暮らしになじんでいる。ほんのささやかであっても、お金を出すことになんの抵抗もない。 ▽ところが、世界史に残るようなサイクロン被害に見舞われたミャンマーや、8万5000人を超す死者、行方不明者の出ている中国・四川大地震の被災者への義援金となると、突然、心の中でストップがかかる。 ▽ミャンマーでは軍事政権の支配が続き、民主化運動に対して激しい弾圧が行われている。中国によるチベット民族弾圧のニュースも、連日、新聞紙上をにぎわせた。ともに、独裁的な政権が政治を仕切っており、たとえわずかな額でも、そうした政権を支援することにつながる募金には、二の足を踏むのである。 ▽先日も、ある大学の宗教活動委員会から、一口500円以上をという義援金の呼び掛けがあった。すぐに申し込もうと思ったが、待てよと考えた。もちろん、お金を出すことにはなんのためらいもない。ところが、そのお金が果たして被災者に届くのだろうか、と思ってしまったのだ。 ▽われながら心の狭い話である。けれども、救助隊の受け入れを阻んだり「人は要らない。金だけくれたらオーケー」というような政権に、たとえ1000円でも協力するのには抵抗がある。でも、被災者の悲惨な状況を想像すると、なんとか義援金は届けたい。悩ましい問題である。(石)