「寝床寄席」は、初の高座シーンだったので正直言って余裕がなかったんです。ですから、後になって7週の映像を見たとき「弟子たちは本当に草若の復活を待ってくれていたんだな」と感動しました。大抵撮影現場では端から端まで見えているつもりなのですが、あの時は本当に自分のことだけしか考えられなかったですね(苦笑)。それに、私たちがやる落語はどうしてもたかが知れている。(林家)染丸師匠や(桂)吉弥くんといった、本職の落語家さんがいらっしゃる前で撮るというのもこれまたプレッシャーになっていました。
今までは、落語をやらない落語家だったのでよかったのですが、復活すると落語のシーンも増えて大変です(苦笑)。染丸師匠にご指導いただきながら頑張っているのですが、繰り返し練習してもなかなか上達しないんですよ(笑)。それに、いつも撮り終わってから思うのですが、どうしても一生懸命やってしまう。もう少し肩の力を抜いてできないものかなと自分でも思うんですけどね。
そう思うと、好きなことを商売にする飲み屋のオヤジ(木村祐一さん)や、そこに来ている落語好きな客(松尾貴史さん)の『寝床』の方たちは、ことばや三味線、落語など負荷をしょっていなくていいなぁ。彼らはとっても楽しいだろうなぁと勝手に思いながらいつも撮影をしています(笑)。