番組サイドから「伝統を意識しつつ、新しさが感じられる映像を」というオーダーがあり、私たちからはヒロインが小浜から大阪に行き、また小浜に戻るというような時間の流れを足したらどうでしょうか?という提案をさせていただきました。ですから、出来上がった映像は、伝統的な日本の美とドラマの流れの2つをコラージュしたものになっています。新しさに関しては、番組の方からヒントをいただき、外国人から見た日本のデザインというコンセプトで映像作りをしました。日本人には何気なく見えるものでも、外国人にはすごく新鮮に映ることがありますよね。そういった感性を表現できたらと思ったんです。
ドラマの流れを取り入れるということで、冒頭はヒロインのふるさと・小浜をイメージした映像 (写真 a) からスタートすることにしました。最初に登場する波と家並みは、実際に小浜で撮影した写真を加工したものなんですよ。中盤で水引と扇が登場 (写真 b) するのですが、これはおめでたいイメージを表現したもの。小浜と大阪をつなぐという意味も含んでいます。
その後、大阪をイメージした素材が続々と登場。まず、上方落語界で使われている数々の家紋 (写真 c) 。そして、大阪城や通天閣、太陽の塔などがあり、落語の高座へ (写真 d) と続きます。この高座は、大阪府立上方演芸資料館(ワッハ上方)が持っているものを撮影させていただきました。徒然亭の紋である蝉のマークは後で入れたのですが、台座や鐘はもともとステージ上に置かれていたもの。松竹梅は舞台背景に描かれていた絵を加工しました。
また、2羽のすずめ (写真 e) は最初アクセントで入れていたのですが、それが親子に見えるということになって…。親子のすずめが一緒に飛んでいて、ひなの方は旅立ち、母鳥は巣へ戻っていく。そして、成長したひなが再びふるさとに戻り母鳥と再会する。そんな物語にも見えるのではないかと思います。
背景には最初から最後まで和紙を使用しました。ハイビジョン映像では、その質感がより伝わりやすいのではと思います。そこに重ねた様々なモチーフは、日本人ならどこかで見たことのあるような伝統的な柄を選択。若狭塗のお皿 (写真 f) や瓦の一部、下駄、ふすまの引手といったものも登場しますので、探していただくのも楽しいかもしれません。
映像はフルCG(コンピューターグラフィックス)で制作しているのですが、簡単に言うと3Dの空間上にモチーフを置いておき、それをCGのカメラで追いかけているような感じ。ちなみに、多いところで約30のモチーフが重なり合っているんですよ。
オープニングには1分10秒と1分25秒の2バージョンがあって、長いものは月曜日にだけ流れます。少しの違いはあってもほぼ毎日同じ映像を見ていただくことになるわけですよね。ですから、なるべく飽きのこないものにしたいという思いはありました。家族団らんでご覧になって見るごとに新しい発見をしていただける、宝探しのような映像にしたつもりです。佐橋(俊彦)さんの音楽と一緒に、毎日楽しみに見ていただけたらうれしいですね。