拉致被害者の横田めぐみさん(当時13歳)について、帰国した被害者の地村富貴恵さん(52)が日本の当局に、「94年6月に自分たちの隣に引っ越してきた」と証言していることが分かった。新証言は、「94年4月に死亡」とする北朝鮮の説明と矛盾する内容。「拉致問題は解決済み」としてきた北朝鮮側説明を覆すものでもあり、拉致問題の今後の行方にも大きな影響を与えそうだ。
昨年末、当局に証言した。それによると、めぐみさんは94年6月、保志さん(52)と富貴恵さん夫妻が住む招待所の隣に1人で引っ越してきた。数カ月そこに暮らしていたが、その後の行方は分からないという。
また、当時のめぐみさんについては「かなりうつ状態が激しく、精神的に不安定な状態だった。北朝鮮の対外情報調査部(現・35号室)幹部が看病していた」と証言した。
めぐみさんをめぐっては、これまでに、蓮池薫さん(50)の証言で、(1)北朝鮮が死亡したとする時期の1年前(93年春ごろ)から夫と不仲で別居していた(2)94年3月に精神科病院に入院する準備を蓮池さんが手伝った--ことが判明。警察の捜査で、よど号グループによる欧州での拉致を除き、対外情報調査部が日本人拉致を実行したことも分かっている。
めぐみさんの消息について北朝鮮は、初めて拉致を認めた02年の日朝首脳会談で「93年3月に自殺」と説明。04年に蓮池さんの「94年まで目撃していた」との証言が明らかになると、北朝鮮は「94年4月自殺」に訂正した経緯がある。
06年に存在が明らかになっためぐみさんの夫である韓国人拉致被害者も「94年4月に病院で自殺した」と北朝鮮での会見で明らかにしている。
新証言について、横田滋さん(75)は「政府から直接聞いた話ではないので確かめたい」。早紀江さん(72)は「どの家族も生きていると思って頑張ってきた。一刻も早く助けてあげたい」と話した。
毎日新聞 2008年5月26日 大阪朝刊