学位とったころの風潮は、猫もしゃくしもポスドク。日本でもようやくポスドクが増えてきたころだった。まだまだビッグラボにしかポスドクがいないころだった。それより小さいラボもポスドクを持てるお金を手に入れ、がんがん新卒博士をポスドクとして囲っていった。自分達もまずはポスドクとして経験を。。。という意識だった。アメリカはそうだよ、とにこやかに微笑む帰国したての若い助教授の顔を今でも覚えている。
5年がたった。
そろそろアカデミックポジションに、、、と思って、恩師のラボを伺うと、そこには若々しい助教が座っていた。
「あ、こんにちは!お噂は聞いてますよ。僕は去年卒業したばかりですが、先生に拾ってもらいました。よろしくおねがいします!」
あれ、えっと、先生、自分も助教の職を探してると言ってましたよね。とは言えず、でも先生のどこかよそよそしい姿で、自分がどこかで置き去りにされたことを気づいた。
そうなんだ。
ポスドクとしてこきつかわれて、いよいよと思ったら、今回は若い者の可能性にかけたよ。と言われるんだ。
僕らが若いとき、あなたたちは経験が必要だと言いましたよね。
笑顔でまた遊びにきてくださいと言った彼に罪はない。
君ならいいとこ見つかるからと言った先生に罪はない。
誰も責めるつもりはない。
でも、帰り道にため息つかせてください。
置き去りにされた者のため息をつかせてください。