四十歳を超えた今、仕事で夜勤が続いたり、たまの草野球でグラウンドを走り回ると、視力や体力の衰えを痛感せずにはおれない。車の運転をしていても、状況を即時に判断する力は若いころと比べ随分落ちている気がする。
加齢による反射能力の低下とは関係ないが、二十年ほど前に起こした物損事故の記憶が、このところ頭をよぎる。店の駐車場から車を出そうとした際、誤って壁面にぶつけてしまった。急発進しかかり、慌ててブレーキとアクセルを踏み間違えたのだ。
今月に入り、これと同じような事故が岡山県内で相次いだ。いずれも高齢ドライバーで、一件は歩道にいた一家四人が死傷する事態を招いた。二十三日には福島県でも、小学校の運動会の場所取りに並んでいた人の列に七十九歳の車が突っ込み、五人が死傷した。
多発する事故対策として、七十歳以上の運転者には免許更新時に身体機能を確認する講習が義務化されている。来年六月までには、認知機能検査の結果次第で免許が取り消される制度も導入される。
国民の十人に一人が七十五歳以上という超高齢化社会を迎え、事故防止への取り組みは急務だ。だが、バスなど公共交通機関は過疎地に限らず細り、中心市街地の衰退で都市機能は車が必要な郊外に拡散している。免許の返納、取り消しにより高齢者から足を奪うだけでは、社会からの孤立という別の問題を生じさせるにすぎない。
高齢ドライバーが引き起こす事故のニュースを耳にするたび、まちづくり、車づくりがもっと真剣に議論されなければならないと思う。
(社会部・前川真一郎)