状況証拠と物的証拠
2007年02月22日今日は、投資ビジネスの話です。
「自分では投資をやっていないのに、投資の世界に関係のある言葉・知識・経歴を巧みに道具として使って、それを飯の種にすべく、投資の世界にてんで無知なお客さんからお金を取ってしまう。」
という詐欺話について。
ん?
分かりにくすぎる?
それでは、この話の結論から先に申し上げます。
「投資ビジネスの世界というのは、ある意味、『オレはプロだ!』と言ってしまった者勝ちという側面があることを、投資の世界に疎い一般人も、もっと強く認識しなければならない。それが自分の財産を守る初めの第一歩である。」
ということです。
投資の実践家のように見える人が、その実、投資を全くやっていない・・・
この可能性を、あなたは信じられるでしょうか?
もっと根本的な話をすると、こういうことです。
●投資本を書いている人に対して、何の疑いもなくこの人はすごい投資家だと考えたことはないですか?
事実、私も無知だった頃は、「本を出せる人というのは選ばれた人なんだ!」という先入観をもっていました。
実際、小説本やマンガ本の世界では、素人がいきなり出版社に持ち込んだところで門前払いされるのがオチだと言われています。(まあ、これとて、事実と違うのかもしれないが。)
しかし、投資本の世界はそうではない。
極端な話、どこの馬の骨かも分からないような輩が「私は、この投資手法で○○万円儲けることができました!」という原稿をもって行けば、それが採用されて本になってしまう可能性がある。
だから、日本の投資本は駄本が多いのだが、こういう事実を多くの人がもっと知っておくべきである。
●金融機関やコンサルティング会社に勤めていたことがある人に対して、この人は投資のことを何でも分かっているのではないかと思ったことはないですか?
これは、私自身が、信託銀行の運用部門に在籍していたことから、非常によく分かっています。
例えば、「ファンドマネージャー」という名のつく職業。
この言葉だけで、無知な一般人は「株式投資のプロ」だと思ってしまう。しかし、それは大きな間違いだということを知っておかなければならない。
事実、私が担当していたのは、債券のインデックスファンドだ。
株式投資については、個人投資家としてキャリアしかない。もちろん、相応に勉強していますし、実践もしていますが。
もっと言ってしまうと、仮に、株式のファンドマネージャーだからといって、それを無条件に腕のいい投資家だと思ってはいけないということです。
金融機関という広いくくりにすればいわずもがなで、それだけでプロと思ってしまうのは非常に危険です。これは、コンサルティング会社という触れ込みでも同様だと思います。
●人づて(あるいは、ネット上)で聞いた評判だけを頼りに、ある投資家のことをすごいと信じて疑うことなく過ごしたことはないですか?
上記と同様、これも気をつけなければなりません。
さらに地雷を踏むような発言が続くのですが、ハッキリ言いますと、そこらへんに転がっている投資本の知識くらいであれば、ちょっと勉強すればその道の専門家っぽく装うことは十分に可能だということです。
「詐欺師のススメ」ではありませんが、それくらい疑ってかかるくらいがちょうどいいということです。
これは、機関投資家の世界でも個人投資家の世界でもそうですが、特に、個人投資家の世界では気をつけなければならない話です。
と言いますのも、個人投資家の世界は、個人のアカウントに監査が入っていないし、そもそも素性が分からないことも多いからです。
別に、個人のアカウントに監査を入れるべきだという話ではありませんので、そこは誤解しないでください。
個人情報保護の問題にも関わりますし、投資家の評価がパフォーマンスだけではなく、普段どんな発言をしているのかということも重要な要素だということはわかっておりますので。
それに、見る人が見れば、別に個人のアカウントに監査を入れるまでもなく、
「こいつ、実はニセモノなんじゃないか!」
と、感じることはできますので。(ただし、投資に対してそれなりに深い洞察を持っていなければ、見抜くのが難しいケースもごく稀にある。)
しかし、そのようなニセモノ捜査は、あくまでも「状況証拠」に過ぎず、決定的な「物的証拠」ではない。
状況証拠だけを見れば限りなくクロに近いのだが、決定的な物的証拠がないので、シロだと開き直られればそれ以上追求することもできず、したがって、検挙・告訴に踏み切ることの出来ない警察官・・・
そんな気分です。
夜も遅くなりました。それでは、おやすみなさい。