さわかみ投信に見る投信ビジネスの採算性
2006年09月26日個人投資家の世界では、さわかみファンドは有名です。もちろん、代表者である澤上篤人さんも有名です。
前身は1996年に設立された「さわかみ投資顧問」で、1999年に投資一任勘定の免許を取得して現在の商号に変更しています。
多くの個人投資家の支持を受け、地味ながらもファンドの受託残高を伸ばしたさわかみファンド。
さて、その収益性ですが・・・
●営業収入
平成12年3月期 32,168千円
平成13年3月期 63,025千円
平成14年3月期 191,968千円
平成15年3月期 303,038千円
平成16年3月期 447,340千円
平成17年3月期 676,460千円
●経常損益
平成12年3月期 -43,485千円
平成13年3月期 -75,281千円
平成14年3月期 -56,724千円
平成15年3月期 -58,589千円
平成16年3月期 105,630千円
平成17年3月期 199,331千円
●ファンド残高
平成12年3月期 3,353百万円
平成13年3月期 13,293百万円
平成14年3月期 32,290百万円
平成15年3月期 37,776百万円
平成16年3月期 69,256百万円
平成17年3月期 91,979百万円
(平成18年の決算書はまだ開示されていませんでした。)
【結論】
残高も安定し、これから軌道に乗り始めるようになったとはいえ、
「あれだけ知名度があって、メディアでの露出も高い有名ファンドでたったこれだけの利益?」
と感じた人も多いかと思います。
もっとも、私は運用機関で勤めていた経験がありましたから、他人勘定での運用ビジネスの採算性をある程度事前に分かっていたので、それほど驚くような数字ではなかったのですが・・・
さわかみファンドはファンドビジネスとしてはそこそこうまくやっている部類だと思います。しかも、直販が主体なのでローコスト経営でもあります。
一般的に、「1万円以上1円単位」という形式の投信ビジネスで採算が取れるラインというのは残高500億円と言われています。
このとき、信託報酬率1%で収入が5億円。そこから、
●信託銀行へのカストディーフィー
●販売代理会社への手数料
●ファンドマネージャーやアナリストの人件費
●その他スタッフの人件費
●システム管理費
●オフィス賃料
●監査報酬
などのコストがかかりますから、これで採算ラインなのです。
この状況を鑑みると、
「IITは、自己資本の運用かな?」
などと、思ってしまいます。
もっとも、スパークス・アセット・マネジメント投信くらいになれば別格なんですけどね。ここは、強烈に儲かっています。