「観光地の死者数ごまかし」うわさ広がる 四川大地震2008年05月26日06時16分 「観光地のイメージを落としたくない地元政府が死者数をごまかしている」。中国・四川大地震で被災した成都市の観光地について、こんなうわさが広がっている。真相は不明だが、背景には救援活動の遅れに被災者が不信やいらだちを募らせている現状がある。
「銀廠溝(ぎんしょうこう)行き」と車体に書かれた軽自動車が3台、避難所になっている成都市彭州の西郊中学校の校庭に並んでいる。地震前には観光客を送迎していた車だ。今は被災者の仮の住まいになっている。 市の最北部にある銀廠溝は、美しい滝と渓谷で知られる避暑地。成都の不動産会社が80億元(約1200億円)を投じ、米国、韓国の3社と共同でリゾート開発が今年始まったばかりだ。すでにホテルや約90軒の民宿が立ち並んでいたが、地震で渓谷が崩れ建物はほぼすべて倒壊した。 「これだけ被害が出ているのに、なぜ地元のテレビさえほとんど報じないのか」 銀廠溝で被災、西郊中に避難してきた陳定華さん(56)は声を荒らげた。「被害が知れわたるとリゾート開発会社に逃げられるから、地元政府が止めているんだろう」。周りの被災者たちがうなずいた。地震後も、彭州の地元政府担当者は「観光名所を再び開発して銀廠溝のブランドを守る」と地元紙に述べ、計画続行を強調している。動植物園や温泉、スキー場などをつくる計画だ。 地元救援本部によると、銀廠溝を含む竜門山鎮の住民の死者数は422人。だが、銀廠溝への道路の復旧が遅れ、被害の詳細は不明な部分が多い。銀廠溝から西郊中に避難した女性は「私の集落だけで35人死んだ。地元政府の集計は少な過ぎる」と言う。 こうした見方は各地でささやかれている。銀廠溝から約20キロ南の彭州・通済鎮の女性(31)は「銀廠溝では5千人以上が死に、地元政府が口止めしていると聞いた」。 ネットの掲示板でも「死者は1万人に上る」「中国中央テレビはなぜ報じないのか」とエスカレートしている。 地元政府関係者は「ネットで書かれているのは知っているが、竜門山鎮の人口は1万人余りだからあり得ない」と否定する。だが、救援に駆けつけた別の県の関係者は「死者は公表数よりもっと多いかも知れない。地元政府は知っているが、報道機関には絶対に話さないだろう」と語る。 憶測が飛び交う背景には、救援活動の遅れや被災者支援の不足から、地元政府への不信が高まっている事情がある。銀廠溝出身で西郊小学校の避難所にいた男性(40)は「避難所は学校の先生が管理しており、地元政府の人間は見たこともない。物資も足りず、テントも自分でつくった」と憤る。 彭州に隣接する都江堰では、いい加減な被災統計をつくったとして地元政府幹部が罷免された。地元政府に対する被災者の視線は、一段と厳しくなっている。(成都〈中国四川省〉=琴寄辰男) PR情報この記事の関連情報国際
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