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more楽:能楽、歌舞伎、日本舞踊がコラボする「三響会」 囃子中心の舞台創造

 囃子(はやし)を中心に能楽、歌舞伎、日本舞踊の名手たちがコラボレーションする「三響会」が人気を集めている。能楽大鼓方葛野流(おおかわがたかどのりゅう)、亀井広忠▽歌舞伎囃子方田中流十三世家元、田中伝左衛門▽歌舞伎囃子方、田中伝次郎の3兄弟が97年から主催。伝統芸能の新しい舞台を開拓し、実績を作ってきた。三響会の魅力と今後は--。【宮辻政夫】

 今月27、28日、京都・南座で開催される10回目の公演から特色を探ってみよう。

 今回はシテ方観世流家元、観世清和をはじめ、特に豪華なメンバーが顔を合わせる。

 昼の部(27日午後2時、28日午後1時)は「竹生島」から。能の謡と囃子で、歌舞伎俳優の市川亀治郎、片岡孝太郎、中村梅枝が踊る。三響会が創作した新ジャンルの一つ。これまでも、しばしば上演してきた。「月見座頭」は、藤間勘十郎が同題の狂言を舞踊にした。勘十郎のほか、狂言の茂山逸平、歌舞伎の中村壱太郎が出演。

 「船弁慶」は能楽シテ方観世流、片山清司が前半の静御前の舞を見せ、後半の勇壮な知盛を歌舞伎の市川染五郎が踊る。前回、好評だったのでアンコール。これも三響会の代表的演目。

 「安達原」は能楽シテ方、観世銕之丞(てつのじょう)(28日は清和)のほか、茂山千之丞らが出演。すべて能で見せる。清和と銕之丞について、「私たちのことをずっと心配していただいたので、どうしても出ていただきたかった」(広忠)という。

 夜の部(27日午後6時、28日午後5時)は「五人三番三(さんばそう)」から。茂山正邦ら茂山家の若手がつとめる。「船弁慶」は昼の部と同じ演目だが、静を観世喜正が演じる。知盛は染五郎。「安達原」は亀治郎、梅枝、染五郎ら。昼は能で演じた演目を、夜は歌舞伎俳優が長唄で踊る。見比べるのも面白い。各曲とも囃子演奏はいずれも亀井兄弟らで、笛は一噌(いっそう)幸弘ら。

 「あくまで囃子を中心にしたザッツ・エンターテインメント」(広忠)だ。

 三響会は「兄弟3人が勉強し直す場として発足させました。今もそうです」(伝左衛門)。演目の作り方については、能楽界の広忠は、歌舞伎的なことを望み、逆に歌舞伎界に身を置く伝左衛門、伝次郎は能的なものを望む傾向にあるらしい。

 新たな10年に向けて。

 「これからはレパートリーの創造ですね。古典の題材から取って、あと何曲か増やしていきたい」(広忠)

 「歌舞伎のお客様が能を見て、その逆もあり、お客様と演者の交流が続いてきた。これからは(違うジャンルの)すり合わせをどこまでするかを考えながらやっていきたい」(伝左衛門)

 「古典を重視しているので、間違ったことはしていません。囃子というジャンルが根付いてくれるような活動をやっていきたい」(伝次郎)

 3兄弟の父は能楽大鼓方葛野流、亀井忠雄(人間国宝)、母は歌舞伎長唄囃子方、田中佐太郎。ちなみに両親は三響会について、「感想も何も言わない」(広忠)。=敬称略

 問い合わせはチケットホン松竹(0570・000・489)。

毎日新聞 2008年5月24日 東京朝刊

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