【北京=伊藤正】「カルフールに感謝し、買い物に行こう」。今春、中国各地で起こった反仏行動で、不買運動の標的になった仏系スーパー「カルフール」が一転称賛されだした。四川大地震への義援金を2300万元(3億4500万円)に急増させた結果だ。中国商務省が外資系企業の支援額リストを公表、圧力が増す中での決定だ。
カルフールにとってはとんだ災難だった。3月のチベット騒乱後、サルコジ大統領が北京五輪開会式不参加を示唆、4月初めのパリでの聖火リレーがチベット支援グループに妨害された後、中国の青年層が矛先をカルフールに向け、不買運動や抗議デモを展開した。
カルフールは全国百店以上に北京五輪支持のスローガンを掲げ、特売を連発したが売り上げが落ちた。そこに発生したのが四川大地震だ。カルフールは発生当日の5月12日に100万元、14日には200万元のカンパを追加した。
全国の献金競争が、18日の国営中央テレビの募金番組で過熱する中、ネット上では内外企業などの拠出額公表を求める声が高まった。商務省は23日、外資系・多国籍企業の寄付金計24億元の内訳リストを発表。
それによると、100万元以上の拠出企業は289社で、100万元以下は3669社。300万元を拠出、116位タイだった。カルフール社は同じ23日、大手サイト「新浪ネット」で、2000万元の追加寄付を表明、途端に同社とフランス人を賛美する投稿が殺到した。
寄付額の上位は1億元の台湾プラスチック集団など台湾系企業が多数を占める。カルフールは一躍、欧米系トップの13位になった。中国での企業イメージを変え、売り上げ増につながれば安い投資か。
1億元を寄付したもう1社は、加多宝集団(本部香港)という薬用ドリンク会社。数年前からテレビ広告で売り上げを伸ばしてきたが、今回の寄付も宣伝効果絶大で、同社の「王老吉」を飲もうとの呼びかけがネット上にあふれた。
「善意をカネで量るのは中国の文化。商売する以上割り切るほかはない」とはある日系企業代表。同社は既に寄付した100万元に追加を検討中という。
こうした中で、温家宝首相は24日、ミャンマーへの1000万ドルの追加支援を表明した。ネットでは、中国の戦略的利益には必要と支持する声の一方、内外の対中支援意欲をそぐとの疑問も上がっている。
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