◎活性化ファンド 地域の総合力が試される
国と県、地元金融機関の北國銀行がそれぞれ資金を拠出する「いしかわ産業化資源活用
推進ファンド(活性化ファンド)」が三十日に創設されることになった。石川は農林水産物や伝統工芸、観光、医療など新たな産業展開の可能性のある地域資源に恵まれたところである。地域中小企業を応援する全国最大規模のファンドを活用し、新しい産業の創出や新商品の開発が進むことを期待したい。
総額二百億円の活性化ファンドの運用益は、十年間で約二十億円が見込まれ、新たな産
業の「種」を育てるための助成金として活用される。この取り組みを成功させるには、民間のアイデアや工夫が重要なことはむろん、立ち上がりの資金援助にとどまらず、事業化のさまざまな段階でサポートする官民の支援体制が不可欠であり、新産業を創出する地域の総合力が試されることになる。
県は活性化ファンド事業を行う県産業創出支援機構に「地域振興部」を新設し、能登地
域での産業化支援を強化するため、奥能登行政センターに「能登サテライトセンター」を置く方針という。
県産業創出支援機構は、文字通り新規創業などをバックアップする中核機関であり、起
業をめざす人たちに対する相談からコーディネート、専門家の派遣、販路開拓支援などでその能力をフルに発揮することが求められる。ファンド事業の進展に応じて支援機構の強化を検討する必要もあろう。
また、活性化ファンドに八十億円を拠出する北國銀行のネットワークや情報力などを生
かすことも考えてもらいたい。
ファンドの活用では、農林水産業と商工業の連携、いわゆる農商工連携や医療・保健分
野と商工業の連携によって新たな商品やビジネスモデルを開発することに力点が置かれている。北陸の企業の間ではこのところ、特産加工品の開発など農商工連携のビジネス展開が活発になってきており、活性化ファンドの創設でその動きに弾みをつけたい。そのためには、とかく縦割りの弊害に陥りがちな行政組織における農商工連携の強化も大事である。
◎止まらぬ原油高騰 サミットの緊急テーマだ
国際的な指標となる米国の原油先物相場が初めて一バレル=一三五ドルを突破し、世界
的インフレ傾向に拍車をかける懸念が生じてきた。一九七〇年代の二度にわたるオイルショックの経験からすると、現在では一バレル=一二六ドルを超えると危険水域に入ったと認識しなければならない。
すでに物価高が起き、世界経済への悪影響が心配されているのに、先物相場がさらに進
み、一バレル=一五〇ドルを超えるとの見方も広がっている。
危険水域に入ったことを重視し、落ち着かせるための処方せんが必要である。七月に開
かれる北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)が喫緊のテーマとして取り組まなければならなくなったのではないか。サミットはそもそも第一次オイルショック後の苦境を乗り切るために創設されたことを思い出したい。
原油に取って代わる画期的なエネルギーの出現と普及にはまだ時間がかかる。省エネも
できることは相当にやったというのが現状である。
したがって、差し当たって必要なことは産油国側を説き伏せ、増産に踏み切らせること
である。増産によって原油の需給逼迫(ひっぱく)が長期にわたるのではないかという見方を否定するのだ。
原油高騰の原因として、欧米がバカンスを迎えてガソリンや軽油の需要が高まること、
ちょうどその時期に中国・四川大地震の復興が始まり特需が生じること、にもかかわらず産油国側が増産を渋っていること、そこを狙って投機マネーが続々と先物相場に参入していること等々が挙げられている。
その背景には金余りがあり、その余った金が短期的には利益が大きいとはいえない実体
経済への投資を見限って、うまそうな分野へなだれ込むといった大きな変化があるようだ。世界的な低金利もあって、今や公的年金の積立金まで原油市場へ流入するようになったといわれる。
地球温暖化対策は重要だが、世界経済を脅かし始めた原油高騰に歯止めをかける取り組
みもおろそかにできないのである。