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イタイイタイ病:新たに2人認定 40年の節目に警鐘

 富山県・神通川流域で発生したイタイイタイ病を国が初の公害病と認めて今月で40年。その節目に富山市の女性(74)ら2人が新たに患者と認定され、患者は計194人(生存6人)になった。被害地では環境改善などで風化が進むが、専門医は「今後20年ぐらいは患者が出る。早期発見と治療が大切だ」と警鐘を鳴らす。

 イ病は、カドミウムを数十年単位で経口摂取して発病する。上水道もなかった戦前、戦中を中心に、汚染された川の水を飲み、作物を食べたことで体がむしばまれた。

 今月認定された女性もその一人。「“イタイ”の痛みは特別。骨がシクー、シクーして、せきをしても、のびをしても痛い。落ちたものも拾えん」と全身の激痛を表現する。

 女性は18歳で農家の夫と結婚。義母もこの病気だった。数年後に太ももを骨折して寝たきりとなり、60代で亡くなった。

 自身も50代になってかかとに覚えた痛みが全身に広がった。県内にイ病を診断できる専門医は少ない。病院を回ったが「原因不明」。患者の早期発見を目的にした検診を十数年受け続け、二次検査に進んだが、06年には歩けなくなった。翌年、ようやく患者の前段階の「要観察者」と認定。富山市の萩野病院で専門医の青島恵子院長の診察を受け、患者認定につながった。

 自治医科大と青島院長らの疫学調査では、被害地で地元産の米を長年食べ続けた60代の農家の女性は、血中や尿中カドミウム濃度の平均値が非汚染地の女性の2倍にのぼる。流域住民二千数百人が毎年、検診を受けるが、受診率は対象者の3割台にとどまっている。

 98年以降、患者と認定されたのは計13人。青島院長は「(川の汚染がひどかった)戦中を過ごした今の70代を中心に、今後20年ぐらいは患者が出る。早期の対応が必要だ」と指摘する。

 女性は「あれから40年になるのに、患者になるなんて。今も私のようにイ病と分からず病院を転々とする人もいるはず。イ病を忘れんでほしい」と顔を曇らせた。【田倉直彦】

 【ことば】イタイイタイ病 旧三井金属鉱業神岡鉱業所(岐阜県飛騨市、現・神岡鉱業)が排出したカドミウムにより、富山県の神通川下流域で発生した。腎臓障害の重症化で骨がもろくなり、患者が激痛のあまり「痛い、痛い」と訴えたことが病名の由来。水俣病、新潟水俣病、四日市ぜんそくとともに四大公害病の一つ。

毎日新聞 2008年5月25日 20時01分(最終更新 5月25日 20時53分)

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