働き盛りの世代は、少々体調を崩しても職場には休暇を申請しづらい。不規則勤務が常態化している新聞記者などは、病院や診療所が開いている午後5、6時に勤務を終える日は皆無なのでなおさらだ。ついつい「都合のいい時間に医者に診てもらいたい」と考えてしまう。
そんな軽い気持ちで夜間救急病院を受診することを、24時間営業のコンビニエンスストアになぞらえて「コンビニ受診」というが、この行為が地域医療を蝕(むしば)み医師不足の原因の一つになっていると指摘されている。先月、全道の市町村議会議員有志らが発足させた「地域医療を守る地方議員連盟」の設立総会で、医師たちが訴えていた。
へき地だけでなく地方の中心的な市や町でも医師の大量退職が相次ぎ、医師不足は深刻さを増す。医科大学を卒業した研修医が自由に研修先を選べるようになり、大学病院が地方の病院に医師を派遣する余裕がなくなったことが背景にある。さらに医師たちは、コンビニ受診の増加で心身ともに疲弊し、地方にいられなくなるというのだ。
私は5年前に高熱で苦しんだ時、「仕事が忙しいから」と夜間救急病院を受診したことがある。当直の若い男性医師は不平一つ言わず診察してくれたが、数年後、この病院から医師が大量退職してしまった。「自分も医師の士気をくじく、わがままな患者だった」。後悔先に立たず。地域医療をどう守るかを読者とともに考えていくことで罪滅ぼしをしたい。【鈴木勝一】
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毎日新聞 2008年5月15日 地方版