アイヌの人たちが行う「クマ祭り」は多くの人びとに知られています。しかし、その本意とするところは、毛皮や肉などをアイヌの人たちに届ける役割を果たすために、アイヌモシリを訪れたクマの"霊"をそれが住む世界へ送り帰すための儀礼です。したがって、正しくは「クマの霊送り」です。霊を送るにあたっては丁重な儀礼が行われ、そして盛大な饗宴とおみやげが伴います。アイヌの人たちにとって、アイヌモシリに生起する事象がもつ"霊"をその世界へ送り帰すことは、とても大切な儀礼となっています。それがアイヌの人たちのくらしに密接であればあるほど、盛大かつ厳粛に行われます。
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イノカ(木偶)。サハリンアイヌが用いたもので、クマの霊送りのときにつくり、豊猟を祈る(旭川市博物館蔵) |