昨年11月に国土交通省が道路中期計画を発表して以来、各紙は、暫定税率部分も含め道路特定財源の一般財源化を主張してきた。
暫定税率はいったん期限切れとなったが、租税特別措置法案の再可決によって復活した。そして、13日の道路整備財源特例法改正案の再可決により、道路特定財源を、実際に道路建設に支出できるようになった。
ただし、福田康夫首相は、道路特定財源の一般財源化を約束している。これを担保する意味から、特例法改正案の再可決の前に、閣議決定を行った。
特定財源をもとに道路を10年つくり続けるという特例法と、来年度からの一般財源化を盛った閣議決定が並立するのは、一般財源化を求める世論と、道路族の双方に配慮した妥協の結果だ。
「これまでも閣議決定が後にほごにされたり、法案化の段階で骨抜きになった例はある」(毎日)だけに、各紙ともこの点に焦点をあて一般財源化を求めている。
しかし、これも含め日本の政治に何が必要かという点で、違いが出ている。福田首相の強いリーダーシップに期待するのか、もはや国民の信を問うべき段階にきているとみるのかで、論調は分かれている。
日経は「今後は自民党の道路族議員らが一般財源化を骨抜きにする動きを強めることが予想される。首相は党内の抵抗を断固排して一般財源化を成し遂げる覚悟が要る」と主張する。
このほかにも、「自民党内のいわゆる道路族は、中期計画の策定をめぐり圧力や抵抗を強めるだろう。首相は、これらを排していかねばなるまい」(読売)や「道路財源改革は小泉、安倍両内閣でも踏み込めなかった。道路特定財源を力の源泉としてきた道路族を押さえ込み、着実に準備作業を進めることで、首相は不退転の決意を示すべきだ」(産経)という指摘がある。
とはいえ、「暫定税率を含めた問題に結論を出すという今秋の税制抜本改革時には、基礎年金の国庫負担割合の引き上げに伴う財源確保などの難題が、待ち受けている。消費税率引き上げ問題にも、触れざるをえない」(読売)という状況だ。
道路特定財源にとどまらず、税制の抜本改革が課題となるわけで、支持率が低迷している福田政権に、指導力を発揮できるだけのパワーが果たしてあるのだろうか、誰しも疑問に思うところだ。
暫定税率が期限を迎えた4月1日時点で毎日は「有権者が動かすほかない 首相は解散から逃げるな」との見出しを掲げ、政治を次のステップに進めるには解散・総選挙の決意が必要であることを訴えている。
同様に他紙も14日の社説で、解散・総選挙で国民の信を問うべきだとの主張を展開している。
「この停滞を打開するには、結局、勝敗をつけるしかないのだ。福田首相は一刻も早く衆院を解散し、総選挙で国民の信を問うべきだ」(朝日)、「ねじれ国会で政府・与党が出した結論は民意とねじれている」(東京)、「国民は納得しないだろう。信を問う時ではないか」(同)といった具合だ。
ただ、「解散したからといって、与党が勝てば『ねじれ』は続く」(朝日)。にもかかわらず、解散を求めるのは、ねじれを抜本的に解消するには政界再編が必要で、それを促すために総選挙を行うしかない、ということからだ。
しかし、低支持率のまま与党が解散に打って出ることはまずない。ないものねだりということになるわけで、歯がゆい思いが、行間からうかがえる。
一方、野党側の対応について、産経は「今国会で不透明な道路行政を追及し、首相に道路特定財源廃止を決断させた点は、民主党の功績だともいえる」と指摘している。
ただ、「一般財源化という点では一致しているにもかかわらず、協議に応じようとしなかった」(毎日)ことも、見逃してはならないポイントだろう。衆院選の争点として対立の構図をとっておこうということなのだ。
終盤国会について読売は「民主党は、審議の引き延ばしではなく、徹底した論戦を通じて、政府を追及していくという。議会政治の本道である」と指摘している。しかし、「道路問題はこれで一段落との空気が政界全体に流れてはいないか」(毎日)というのも重要な点だろう。
道路財源の一般財源化を見越して予算の争奪戦の動きが早くも与党内で活発化しているが、「国会審議で次々と明らかになった税金の無駄遣いをどうやってやめるのか、対策は不十分なままだ」(同)というのが、国会に対する国民の視線だろう。
今国会の会期は6月15日までだが、このまま、消化試合で終わるようなことだけは避けてもらいたい。【論説委員・児玉平生】
毎日新聞 2008年5月18日 東京朝刊
5月25日 | 後期高齢者医療制度 失政認め再議論を |
5月18日 | 道路法案再可決 各紙、一般財源化で一致 |
5月11日 | 憲法記念日 「9条改正」主張なし |
5月4日 | ガソリン税再可決 「環境整わず」と批判 |
4月27日 | 何を取り上げるか 選び方に各紙の「色」 |