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A級戦犯:「東郷神社が受け入れを」 前宮司、著書で提言へ

 ◇分祀論「靖国宮司に説明」

 靖国神社に祭られているA級戦犯を、旧海軍ゆかりの東郷神社(東京都渋谷区)に分祀(ぶんし)すべきだ--。東郷神社前宮司の松橋暉男(てるお)氏が来月出版する著書「幻の揮毫(きごう)」(毎日ワンズ)で、神社関係者では異例の提言を行う。

 全国8万神社をまとめる神社本庁は「分祀は神道の教義上できない」との見解をとっているが、傘下の有力神社の「A級戦犯受け入れ」表明は、分祀論議に拍車を掛けそうだ。

 同書は、A級戦犯合祀が中国などの反発を招いた問題は、首相参拝が行われなくても解決しないと指摘。論争が収まった「今こそ真剣に取り組むべき時だ」と訴える。そのために、東郷神社境内の「海の宮」にA級戦犯を合祀するよう提唱。神社本庁などの主張通り靖国神社に「御霊(みたま)」が残っても、東郷神社に「移った」と見なして「ご遺族は心おきなく新しい座にお参りすることができる」ようになるとしている。

 中国などにも「誠意ある対応をしたことになる。靖国参拝のカードは有効でなくなる」ため、外交問題を沈静化できるという。

 松橋氏は「私は靖国神社に代わる新たな国立追悼施設反対の立場で、神社本庁と一致している。後任の東郷神社現宮司も私の考えをわかってくれると思う」と話している。

 松橋氏は小泉純一郎元首相の参拝が問題になった05年にも分祀論を試みたが、神社本庁から「発言を慎むように」と注意され断念。07年4月に名誉宮司に退き、提言に踏み切った。旧知の南部利昭・靖国神社宮司にも分祀の必要性を説いているという。

 分祀論は、日本遺族会の古賀誠会長も賛同。遺族会は07年5月に検討の勉強会を設けている。【野口武則】

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 ■ことば

 ◇東郷神社

 日露戦争の日本海海戦で勝利した連合艦隊司令長官の東郷平八郎元帥を軍神として祭る。戦前、靖国神社と同格の別格官幣社に列せられることが決まっていたが、1945年に空襲で本殿が焼失したため取りやめになった。現在、崇敬会「東郷会」の名誉会長は旧皇族の東久邇信彦氏。

毎日新聞 2008年5月25日 東京朝刊

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