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義歯の金・銀…火葬後の金属財源化 福岡市、今年度から

2008年05月25日14時06分

 火葬の後に残る、義歯などに使われていた貴金属を回収・換金して財源に組み入れる制度を、福岡市が今年度から導入した。これまでは業者が換金し収益を得ることが認められていた。市によると、一部自治体に先行事例はあるが、珍しい。ただ、遺族感情に配慮して同様の制度を廃止した自治体もあり、葬送の専門家の間には慎重な対応を求める声もある。

 火葬後の遺灰には歯の治療で使われた金や銀、パラジウムなど貴金属が残っている。

 福岡市では、遺灰の運搬・処理は指名競争入札を行い、業者と年間契約を結んでいる。これまで貴金属は業者が独自に回収。売却して収益を得てもよかった。が、今年度から売却した利益を市に納めることを義務づけた。

 市内唯一の公営火葬場、市葬祭場(南区)で昨年度に火葬された遺体は8742体。遺灰処理の委託費用は約28万円だった。これまで業者は金属の収益を見込んで実際の作業費用より安く落札していたとみられる。このため、新制度になった今年度の入札以降は貴金属分の埋め合わせで落札額が高くなる可能性があるという。

 市の担当者は「委託費用が値上がりすると、市にとって貴金属と差し引きしてどの程度のプラスがあるのかわからないが、収入増につなげられれば」と話す。

 厚労省によると、遺灰の処理については墓地埋葬法には規定がなく、火葬場管理者に任されている。火葬場の実態調査などをしているNPO法人、日本環境斎苑協会(川崎市)によると、自治体が貴金属の売却益を財源に組み入れている例はまれだ。

 福岡市が昨年、東京都と政令指定市を対象に調べたところ、東京都が同様の取り組みをしていた。都によると、都営火葬場の遺灰から取り出された貴金属類の提出を業者に義務づけ、これを換金。年間約300万円の収入があり、一般会計に繰り入れている。

 新潟市は06年度まで一部の火葬場の遺灰を業者に売却していた。業者は金属を売却できるため、同年度は約9トンが720万円で売れたという。だが、07年度から遺族感情などに配慮して取りやめた。

 静岡、浜松、広島の各市では、遺灰処理業務を業者と1円で契約。貴金属の換金・財源化と実質的に同じ効果が出ている。各市とも「業者の側は金属を売って処理費用に充てることを見込んでいるのだろう」としている。

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