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生活保護の通院交通費打ち切りも…読売調査に30都道府県

5月25日3時0分配信 読売新聞


 生活保護受給者に支給される通院交通費を巡り、北海道滝川市の元暴力団員が約2億円を不正受給した事件を受け、厚生労働省が打ち出した新たな支給基準に、自治体の間で困惑が広がっている。

 読売新聞の取材に、30都道府県が「支給打ち切りの受給者が出る可能性がある」と回答。「事実上の保護費切り下げ」との指摘も相次いだ。これまでは多くの自治体が電車代やバス代を払っていたが、新基準は、やむを得ず高額になる交通費に支給を限定しているためだ。受給者からも「生活が圧迫される」と不安の声が出ている。

 通院交通費の基準はこれまで「最小限度の実費」とされているだけで、支給するか否かの判断は自治体に任されてきた。滝川市の事件を機に不正受給を防ぐため、厚労省が先月、自治体に通知した新基準は、支給範囲について、〈1〉身体障害などで電車やバスの利用が難しい場合のタクシー代〈2〉へき地等のため、電車やバスで最寄りの医療機関に行っても高額の交通費がかかる場合−−などに限定。原則、福祉事務所管内での通院が対象で、7月から本格導入される見込みだ。

 同省保護課は「どの程度、支給するかは自治体の判断」としつつ、「高額ではないバス代や電車代は、(生活保護費として支給している)生活費の中で賄ってほしい」とする。

 新基準について今月、都道府県に聞いたところ、支給打ち切りや減額のケースがあり得ると回答したのは、北海道や東京都、大阪府など30都道府県、「検討中」は13県。「これまでと変化はない」は4県だった。自治体間で現在の支給実態に開きがあることが、回答の差になって表れたとみられる。

 新基準では、「へき地等」「高額」の判断基準がはっきりせず、多くの自治体が明確化するよう求めている。東京都などは同省が明確な基準を示すまで従来通り対応するとしている。

 自治体担当者からは「不正受給でもないのに支給を打ち切るのは説明がつかない」などの指摘が多い。「国は現場の意見を聞かないで進めている」「『交通費がないから病院に行かない』となるのが一番怖い」といった意見もあった。

 東京都内の福祉事務所の職員は「電車賃やバス代がだめなら、現在の8〜9割は支給できなくなるのでは」と話す。生活保護の支援団体からも厚労省への見直し要請が相次いでいる。

 同省によると、2006年度、延べ約130万人に43億円余の通院交通費が支給された。

最終更新:5月25日3時0分

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