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エコカー用電池、競争激化 3陣営相次ぎ量産態勢

2008年05月24日02時52分

 次世代のハイブリッド車や電気自動車に使うリチウムイオン電池の開発競争が過熱している。日産自動車、トヨタ自動車、三菱自動車の3陣営が09年以降に相次いで量産に入り、電機メーカーも自動車メーカーへ売り込みを図る。

 日産はNECと設立した合弁会社を主体に、日産座間事業所(神奈川県座間市)内に世界最大規模の工場を建設する。生産能力は年間6万5千台分で、09年度から量産を始め、10年度に日米で発売する電気自動車やハイブリッド車に搭載。トヨタと資本関係のある富士重工業にも供給する。日産は経営危機に見舞われた90年代もこの電池の開発だけは細々と続けた。NEC独自のマンガン電極を使い、安全性の高さを強調する。

 トヨタは松下電器産業と合弁で、静岡県湖西市に製造ラインを新設する。10年までに生産を始め、家庭で充電できるプラグインハイブリッド車に搭載する計画だ。社長が日常的に電気自動車を使う三菱自も、大手電池メーカーのジーエス・ユアサと組み、京都市に年間生産能力2千台分の工場をつくる。09年初めから量産を始め、この年に発売する電気自動車に搭載する。

 一方、充電池の世界シェア1位の三洋電機は06年春、徳島工場でハイブリッド車用リチウムイオン電池の生産ラインを立ち上げた。世界の自動車メーカーに試作品を提供し「全方位外交」を目指す。佐野精一郎社長は22日、独フォルクスワーゲンと共同開発に入ることを明らかにした。現在の主流であるニッケル水素電池を供給するフォードやホンダとも今後、供給や共同開発を模索するとみられる。

 日立製作所も00年にグループ会社と専門の電池製造子会社を設立した。10年度に発売する米ゼネラル・モーターズのハイブリッド車向けに年間10万台分を納入する。

 電機メーカーにとって、エレクトロニクス化が進む自動車は商機だ。パソコン用電池で培った技術を活用できるリチウムイオン電池もその一つ。2010年代初めにはトヨタとホンダの2社だけでハイブリッド車を年間150万台販売する計画で、「車用電池メーカーは世界に10社以上と競争は厳しいが、それだけ有望だということ」(日産の合弁会社幹部)と、競争に拍車がかかる。

 特定の自動車メーカーと関係を深めれば、安定的に販路を確保できるが、電機・電池メーカー側には懸念もある。「資金力で勝る自動車側に充電池の中核技術を握られたら我々は食っていけない。共同開発といっても名ばかりになる」との声が出る。

 量産間近とはいえ、リチウムイオン電池は発熱しやすく、価格が高騰している希少金属を電極に使うため、安全性やコストの面で改善の余地がある。トヨタは23日、リチウムイオン電池への投資と並行して、現行のハイブリッド車用のニッケル水素電池工場を宮城県大和町に新設する方針を明らかにした。

 ホンダの福井威夫社長も「リチウムイオン電池は発展途中。今は複数メーカーから買うのが望ましい」と、各社の開発競争の行方を見極めている。ホンダは来年発売の新型ハイブリッド車にもニッケル水素電池を使い、リチウムイオン電池は当面、リース販売する燃料電池車への搭載にとどめる。

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