不動産投資市場の拡大を支えてきた金融機関に、融資姿勢見直しの動きが広がっている。ローンの証券化を前提にしている金融機関のなかには、事実上、融資を停止したところも。投資家の不動産への投資意欲は引き続き強いが、金融機関の審査厳格化は避けられない。今後、融資サイドからの不動産および企業の選別が進みそうだ。
不動産投資を手がけるレイコフ(本社:大阪市)が2008年3月、民事再生法の適用を申請した。引き金となったのは、サブプライムローン問題に端を発した不動産への融資引き締めだ。ホテルの取得や開発の費用を融資で賄うことができず、手元資金が流出。物件の保有コストもかさみ、資金繰りがつかなくなった。
あるデベロッパーの社長はこの事件を、人ごととは思えなかったという。「この半年間、開発事業に対する金融機関の融資姿勢が非常に厳しくなり、ビジネスに支障を来した。最近になって資本調達にこぎつけたので、ようやく一息ついた」と語る。
主要金融機関の不動産向け融資残高の推移
図表は主な金融機関の不動産業向け融資残高の推移を示したグラフだ。2004年9月時点の残高を100とし、その後3年間の動きを指数化している。ノンリコースローンを中心に積極的に融資する金融機関は多く、2007年9月までは全体として右肩上がりだった。
この動きが転換点を迎えている。住信基礎研究所が2007年12月、主なファンド運用会社を対象に資金調達の状況を調べたところ、投資家のエクイティ投資意欲は高いものの、73%の会社が「金融機関の融資が消極的になっている」と感じていた。
「特にノンリコースローンの落ち込みが激しい。バブル経済が崩壊した直後よりも強い資金詰まりを、ファンド運用会社は感じているはずだ」と、ある大手銀行のローン担当者はみる。正確な統計はないが、ノンリコースローンの新規融資の5割以上は外資系金融機関を中心とする「証券化レンダー」が出していた。
不動産ローン債権を裏付けとした証券(CMBS)の発行を前提に融資をしてきたが、サブプライムローン問題が証券化市場に波及。過熱する不動産市場に懸念を持つ金融庁の指導もあって、金融機関を中心としたCMBS投資家も投資が難しい状況に追い込まれた。CMBSが売れない状況下で、証券化レンダーの資金供給が大幅に減っている。
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