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小倉北区のステーションホテル小倉で23日に開かれた、第2回「毎日・北九州フォーラム」(北九州地域懇話会、毎日新聞社主催)の演題は「北九州の魅力と夢をかける未来」。「小倉で育ったから今の道を選べた」と古里への思いを熱く語る地元出身の漫画家、松本零士さん(70)の講演に、約500人が聴き入った。【長谷川容子、佐藤敬一】
松本さんはトレードマークのニット帽をかぶって登場。冒頭、「小倉の街が一番好き。除夜の鐘が鳴ると家の屋上にあがって、九州の方に向いて頭を下げるのが毎年のセレモニー。その時、頭の中にあるイメージは、古里なんていう生やさしいものではない。我が祖国・大九州国です」。作風そのものの壮大な“松本ワールド”に聴衆を引き込んだ。
松本さんは小学生の時から漫画を描き始めた。デビュー後の小倉南高在学時代は、授業中に連載漫画を描かなければ間に合わない日々だったが、先生は見て見ぬふりをし、友人も温かい目で見守り、支えてくれたという。
小倉の街の環境から大きな刺激を受けた。当時の小倉は物流の拠点で、本屋は山ほどあり、映画館も多くてあらゆる映画を見ることができた。「朝鮮戦争の時でも、ある映画館ではアメリカ映画、その隣の館ではソビエト映画をやっていて、両者の発色を比べながら見た。将来、自分が携わる仕事の基礎となる部分を学ぶことができたのがこの小倉だったんです」
多くの作品の原風景は小倉にあるという。代表作の一つ「銀河鉄道999」に触れ、家の前に鹿児島線があり、東京行きのプレートを掲げて走る列車を見ては「必ず上京するぞ」と思っていたことも明らかにした。「宇宙戦艦ヤマト」の艦長は、45歳当時の父の顔をモデルとし、セリフも父との会話を参考にしたという。
夫婦で訪れた小倉北区、辻幹男さん(78)は「松本さんの話す小倉の様子は私も体験した風景。懐かしかった」。小倉南区の久保朗子さん(69)は「北九州空港に銀河鉄道999の女性キャラクターの案内ロボットがあるが、実際に話を聞いて『この人が描いたんだ』と思ってうれしくなりました」。門司区の飲食業、石橋宇佐夫さん(50)は「『九州人としての気概を』という言葉に、同じ九州人である自分にもそういうところがあるので、志を高く持ってそういう気持ちを忘れないようにしようと思いました」などと感想を語った。
フォーラムに続き、ステーションホテル小倉で開かれた北九州地域懇話会の懇親会では、懇話会員の久保祐二・西鉄バス北九州社長が「私の北九州市への提言」との題で講演。U・Iターンによって人口増を図り、市の教育に地域社会を取り込むよう提唱した。会場の北橋健治市長も検討を約束した。
久保社長は、79年の106万人をピークに減り続けている市の人口について「今後も減ればデパートやバス、鉄道などのサービス産業が必ず影響を受ける」と指摘。打開策として市へのU・Iターンを進める提案をした。特に「大半の高齢者はリッチだ。(余生の)20年間、市で消費生活をしてくれる」と述べ、高齢者の移住が市の経済浮揚につながると力説した。
また、「学校教育が家庭と先生、市教委、行政の4者で運営され、地域社会から隔絶されているのではないか」と述べ、市立学校や市教委で地域の人材を活用するよう訴えた。
市長は久保社長の提案したU・Iターンについて「コンセプトを固めて一大運動ができればと思う」と共感を示した。教育についても「日本一の教育ボランティア(体制)を確立したい」と語った。
会員による講演は、北九州市の将来像を民間からも示していこうとの企画で、懇話会は懇親会で恒例行事にしていく方針だ。【平元英治】
講演を前に、地元の女性音楽家で結成した「ミュージックグループ紫音」が登場。「世界の環境首都を目指す北九州の応援歌」と銘打ち、リサイクル社会実現への願いを込めて作ったオリジナルの「北九州菜の花ソング」を披露した。
菜の花から作った食用油を使用後に回収し、せっけんやバイオディーゼル油に再利用する「菜の花プロジェクト」が昨年、北九州市で始まったことから、応援歌を作ることにしたという。「菜の花畑に夢をかけよう」とのフレーズもあり、会場から盛んな拍手を受けた。
〔北九州版〕
毎日新聞 2008年5月24日 地方版