地域福祉の世話役として援助が必要な住民と行政をつなぐ「民生委員」の不足が進み、平成19年度は定員約23万人に対し約5000人の欠員(昨年12月時点)が出ている。欠員数は16年度末に比べ全国で1.6倍に増え、とりわけ都市部の急増が目立つ。大阪市では16年度比で倍以上の欠員が生じた。一人暮らしのお年寄りが増えたり、近所づき合いが薄れたりしていることが民生委員の業務を難しくしており、敬遠する人が増えているとみられる。
民生委員は児童委員を兼ねる地方公務員。自治会などが推薦した人に厚生労働相が委嘱する。任期は3年。19年度の改選では、定員23万2103人に対し、欠員は12月現在で4819人。16年度改選では定員22万9948人に対し、年度末の欠員は3034人だった。
大阪府(政令市、中核市除く)の19年12月現在の欠員は、16年度末に比べ約2割多い267人だった。府地域福祉課は「児童虐待、ひきこもりへの対応など、最近は業務の内容が多岐に渡るようになり、対処できる人が少なくなった」。16年度比で倍以上の74人の欠員が出た大阪市の担当者は、「推薦する自治会の側からも『ふさわしい人柄の方がなかなか見当たらない』という声があがっている」と話す。
兵庫県(同)の欠員も16年度末より8割以上多い134人。社会援護課では「業務の複雑化に加え、個人主義的な発想をする人が増え、地域活動に参画することが敬遠される傾向にあるようだ」と指摘する。
全国民生委員児童委員連合会の実施した調査でも「なり手がいない」「若いメンバーが少ない」など、世代交代が進まないことを指摘する声が多かった。
また、個人情報保護法を理由に自治体から必要な情報が提供されず、活動しにくくなった面も。都市部ではマンションが増え、委員の推薦母体となる自治会や町内会がつくられないところもあり、担い手不足に拍車を掛けている。
こうした状況を受け厚労省は昨年8月、65歳未満を目安としていた新任者の年齢要件を撤廃。民生委員の推薦をPTAや民間非営利団体(NPO)など広範囲から募るほか、活動しやすいよう個人情報に関するガイドラインを作ることも検討することにしている。
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