臨床研修に関する厚生労働省の省令改正で、今年度研修医の受け入れがなかった国立病院機構弘前病院と弘前市立病院は2009年度の状況次第で、指定取り消しが懸念されている。指定病院数が減少となれば、将来的な本県の医師定着への影響も否定できず、両病院は09年度の研修プログラムを更新・拡充するなど、研修医の獲得に必死だ。医師不足が深刻な地方から批判の声が上がっている今回の改正だが、魅力づくりに向けた各病院の意識向上も求められている。
恒例の県医師臨床研修指定病院合同説明会が24日、弘前市総合学習センターで開かれ、国立弘前、弘前市立の両病院関係者も研修プログラムなどを医学生に説明した。
国立弘前病院は09年度の研修プログラムを一新。従来は院内でほぼ完結させていたが、県内、北海道の計五病院を協力型病院として研修内容を広げる。
同病院は弘前大学医学部生の実習を引き受けるなど、学生にとって身近な医療機関。関係者はその点を“売り”にしたい考えだが、若い医師が少ないことを難点に挙げ、「若い医師は世代の近い医師から習いたがる傾向が強い。研修医が新たな研修医を呼ぶ状況があり、そのような状況を生む契機としてプログラムを一新する」と強調した。
一方、弘前市立病院は09年度研修プログラムで選択科を増やすほか、休暇や給料などの待遇面を見直した。
医学生は救急など特徴的な分野を前面に押し出す病院を好み、国立弘前、弘前市立の両病院を含め各病院の説明を聞いたという県内出身の女子医学生(24)は「弘前市内は特に研修病院が多い(4病院)。学生の興味を引くには強い特色が必要」と語った。
県内への医師定着に向けて指定病院数の維持が叫ばれる一方、県内医療関係者の中には「魅力が薄い病院が淘(とう)汰(た)され、やる気のある病院だけが残れば、県内医療機関のイメージ底上げにつながる」との厳しい意見もある。
東北厚生局によると、指定取り消しか否かは、病院の事情をよく聴取し個別に検討する方針という。合同説明会を訪れた同局関係者は「病院が魅力づくりや研修医の受け入れにどれだけ努力してきたかが重要になる」と語った。
【写真説明】今年度研修医の受け入れがなかった指定病院は説明会で必死にアピールした(24日、弘前市)