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【放送芸能】

県域ラジオ全国初 『エフエム九州』経営破たん 後発の悲哀 広告不振響く

2008年5月24日 朝刊

 福岡県域のラジオ放送局「エフエム九州」(本社・北九州市、資本金1億円)が経営再建を断念し、新会社がFM放送「CROSS FM」(クロスエフエム)を引き継ぐことになった。総務省によれば、県域放送をしているラジオ局の経営破たんは全国初。その背景を探ってみると、ラジオ業界の広告費が低迷する中、FM局ならではの経営の難しさが浮かんできた。 (小田克也)

 「残念な結果になったが、新会社の下、放送はこれまで通り続けられる見通しなので、ご愛顧をお願いしたい」。エフエム九州の山本綱夫社長は七日の記者会見で苦渋の表情を見せた。

 バブル崩壊後、工業都市の北九州市が国際技術情報都市へと脱却を図る中、エフエム九州は一九九二年、地元経済界などの出資で設立された。情報発信拠点として期待され、「アジアとの懸け橋に」との願いを込めて「CROSS FM」と名付けられた。県内二局目の民間FM局だった。

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 同県にはエフエム九州のほか「エフエム福岡」と「九州国際エフエム」、AM局で「RKB毎日放送」と「九州朝日放送」があり、東京、大阪、名古屋に次ぐ激戦区。山本社長は「若い世代向けの番組でトップを取れなかった」と敗因を挙げたが、立教大学社会学部の砂川浩慶准教授(メディア論)は「AMに比べてFMは、核となるリスナーがつかないと厳しい」と言い切る。

 その昔、FM802(大阪市)はKANの「愛は勝つ」を集中的に流して大ヒットさせた。CROSS FMの場合は、宇多田ヒカルらが番組パーソナリティーを務めたが、FM局としての存在感をもう一つ出し切れなかったといえるかもしれない。

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 エフエム九州は九六年、本社営業本部を福岡市に移転。二〇〇六年には北九州市経済局長などを歴任した山本氏が社長に就任、放送免許の再取得にあたる今年に向けて体制強化を図ったが、〇八年三月期決算で約六億円の債務超過が見込まれ、自力再建を断念した。

 痛かったのは広告収入の不振だ。ラジオの広告費はテレビや新聞に大きく離されている。「AM局は、まだ地元企業とのパイプがあるが、FM局は希薄だ。まして七〇年に開局したエフエム福岡に比べると、エフエム九州は歴史が浅い」とラジオ業界関係者。

 ライバルのRKB毎日放送と九州朝日放送が、テレビとの兼営局だったことも響いたようだ。地元スポンサーにすれば、ラジオ単独より、テレビとの「セット広告」が可能な兼営局に魅力を感じるのは言うまでもない。それでなくても狭い地方都市で、地元スポンサーの数は限られる。

 エフエム九州の株主は西日本新聞を筆頭にフジテレビ、新日本製鉄、九州電力など。「もともと寄り合い所帯だった」と、経営体制のそのものの脆弱(ぜいじゃく)さを指摘する声も業界内からは漏れる。

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 エフエム九州は七日の臨時株主総会で事業移管を決定。投資会社「ネクスト・キャピタル・パートナーズ」(東京)が設立した新会社「CROSS FM」(鵜木(うのき)有子社長)が放送を引き継ぐ。従業員約三十人は新会社で働くことになる。

 あるテレビ局の関係者は「電波は公共性が高く、国民生活への影響が大きい。だから総務省も、地上波放送局を経営破たんさせないようにしてきたはずだが…」と、むしろ破たんを“容認”した総務省の今回の対応に驚く。

 上智大学文学部の音好宏教授(メディア論)も「総務省が経営破たんを認めたことの意味は大きい。市場競争の下では、優勝劣敗は当然。ただそれが『公共性』を最も重視する地上放送の世界でも、今後は起こり得るとのメッセージを発している」。

 砂川准教授は「地方のFM局の規模は、どこもエフエム九州と大差ない。十数名の社員規模では、番組制作はもちろん、営業活動も十分にできない。厳しい状況ではあるが、独自色が打ち出せないと、このようなケースは今後もありうる」とみている。

 ラジオの広告費 大手広告会社・電通の「2007年 日本の広告費」によると、〇四年にネットに抜かれたラジオ広告費は、千六百七十一億円(前年比95・8%)。テレビ一兆九千九百八十一億円、新聞九千四百六十二億円、雑誌四千五百八十五億円。

 

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