ニュース: 生活 RSS feed
【主張】ダビング10 まずスタートして議論を
1回しかできなかったデジタル放送番組のDVDなどへのコピー回数を10回まで増やす「ダビング10」の実施が危ぶまれている。
6月2日から始まる予定だったが、著作権保護を目的にデジタル機器に課金する補償金制度の拡大をめぐって、著作権団体と電子機器メーカーが対立しているためだ。このままでは、コピー制限緩和を歓迎していた消費者の期待を裏切ることになりかねない。
現在、デジタル放送番組をデジタル録画機に記録させてDVDにコピーする場合、その回数は1回に制限されている。
デジタル技術だと画質や音質が何度コピーしても劣化せず、映画やドラマを無断複製して販売する海賊版が横行したためで、平成16年に著作権団体などの意向を受けて現行規制が導入された。
しかし、これには何度でもコピー可能なビデオテープでの録画に慣れている消費者から不満の声が相次いだ。「ダビング10」の導入は、こうした声を反映する形で総務省の審議会で昨年夏に決まった経緯がある。
ただ、今回の対立の火種は、その審議会の答申にあった。答申で著作権者への配慮が明記されたため、著作権団体が補償金の対象をこれまで網がかかっていなかったハードディスク内蔵のデジタル録画機や携帯音楽プレーヤーなどにも広げるよう要求したからだ。
11年度から始まった録画の補償金制度はメーカー側がDVDやCDなどの記録装置や記録媒体の販売時に価格の数%分を徴収し、著作権者に配分している。メーカー側は著作権団体がこの制度拡大を「ダビング10」実施の条件にしていることに反発し、一気に対立が深まったのである。
しかし、この対立で実施時期が延期されたのでは消費者はたまらない。すでにメーカーは北京五輪に向けた目玉商品として「ダビング10対応」の録画機器を販売している。当初の予定通り「ダビング10」をスタートさせた上で、補償金拡大の是非を議論するのが筋ではないか。
もちろん、違法コピーを放置したままでは、創作文化の破壊につながるとの著作権団体の言い分もわかる。録画で受ける不利益を補う補償金制度も意味があろう。だが、著作権保護も消費者の理解があってこそ成り立つことを忘れてはならない。