ミャンマー軍事政権のトップ、タン・シュエ国家平和発展評議会(SPDC)議長は23日、潘基文国連事務総長に「あらゆる援助要員を受け入れる」と語った。サイクロン「ナルギス」の襲来から3週間。人的支援の受け入れに消極的な姿勢を崩さなかった軍政が、ようやく柔軟姿勢に転じた形だ。
ただ、多くの援助関係者は軍政が約束を守るかどうか不安を抱いている。24日付のミャンマー国営紙は議長と事務総長の会談を1面で伝えたが内容には言及しなかった。
軍政は24日、新憲法案への賛否を問う国民投票を被災地で実施し、被災者の救援より権力維持を優先する姿勢を改めて印象づけた。
米英仏がそれぞれ援助物資を積んでミャンマー沖に待機させている艦船の受け入れを議長が改めて拒んだことも、救援を最優先する発想が軍政にないことを示唆している。
実際にすべての援助要員にビザを発給するのか、被災地での援助要員の活動をどの程度認めるのかなど、軍政の具体的な対応に目をこらしていく必要がある。
国連と東南アジア諸国連合(ASEAN)は25日、ヤンゴンで援助国会合を開く。軍政は復興資金として117億ドル(約1兆2000億円)を求めている。これはミャンマーの2006年度の国内総生産(GDP)のほぼ9割に匹敵する。
軍政に関しては腐敗・汚職のまん延を指摘する声が少なくない。「柔軟姿勢に転じたのは巨額の資金集めが狙い」との見方は強い。国連やASEAN、支援国は、援助が着服されず被災者に行き渡るような監視の枠組み作りが求められる。
その一環として海外メディアの自由な活動を認めるよう促すべきだ。犠牲者に関する情報は16日に7万7000人を超えたと発表された後、途絶えている。被災地の実情は断片的にしか伝わっていない。議長は海外メディアへのビザ発給を事務総長に約束した。今後を注視したい。
もう1つ気掛かりなのは自宅軟禁の期限が迫った民主化運動指導者、アウン・サン・スー・チーさんの処遇だ。軍政は援助国会合で取り上げられることを警戒しているが、これを機に世界の声を届けたい。