前防衛事務次官守屋武昌被告の汚職事件で、贈賄罪などに問われて公判中の防衛商社「山田洋行」の元専務の証人喚問が、参院外交防衛委員会で行われた。証人喚問は、民主党が要求していたが、昨年十一月に元専務が逮捕されたことで実現せず、保釈中の喚問となった。
守屋被告の汚職事件では、政官業による防衛利権疑惑が浮上している。日米政界や防衛産業に太いパイプを持つとされる防衛関連団体「日米平和・文化交流協会」の秋山直紀専務理事側へ山田洋行が資金を提供したなどとされる疑いだ。
秋山氏側への資金提供について、元専務は福岡県・苅田港の旧日本軍毒ガス兵器処理事業に参入するなどの目的で約一億円を払ったことを認めた。さらに、秋山氏が顧問の米国「アドバック・インターナショナル・コーポレーション」に、年約十万ドル(約一千万円)のコンサルタント料を払っていたと証言した。秋山氏は、今年一月の参院参考人招致で一億円の受領自体を否定している。双方の食い違いをあいまいにできない。
証人喚問で質問が集中したのは、秋山氏と親密とされる久間章生元防衛相とのかかわりだった。元専務は、山田洋行のオーナー側と対立して別の防衛商社を設立した後の二〇〇六年十二月に久間、秋山両氏と会食した際の様子を生々しく語った。
久間氏は「(オーナーと息子は)いい親子ではないか」とほめたと証言し「(山田洋行の仕事に)手を出すなということかと思った」と振り返った。「山田洋行は久間氏のパーティー券を購入していたか」との質問には「秋山氏を通じ購入した」と述べ、山田洋行の関係者から久間氏がオーナー親子の後見人になったと聞いたとも話した。
額賀福志郎元防衛庁長官ら政治家との飲食やゴルフも認めた。「回数は数えるほどしかない」としたものの、大臣経験者のゴルフ手配をしたことも明らかにした。
癒着と言わざるを得ない関係である。利権がなかったのか、国会は防衛商戦への政治家の関与などの実態を明らかにする必要がある。
元専務に対する証人喚問は、参院外交防衛委が全会一致で議決していたが、自民、公明両党は写真撮影や録音に反対して異例の欠席となった。証人喚問中の撮影はリクルート事件を機に禁止されたが、一九九八年の改正議院証言法で認められるようになった。政治不信を解消するためにも、与野党は一体となって疑惑解明に全力を挙げなければならない。
スウェーデンとデンマークの間の海峡に架かるオーレスン橋と、今年開通二十周年を迎えた瀬戸大橋が二十四日、姉妹橋縁組する。瀬戸内と北欧の新たな交流への期待とともに、国境を越えて地域の一体的な発展をもたらしているオーレスン橋から学ぶことは多かろう。
スウェーデン第三の都市マルメとデンマークの首都コペンハーゲンの間を結ぶオーレスン橋は二〇〇〇年に開通した。瀬戸大橋を参考にした道路と鉄道の併用橋だ。橋を介して両岸の交流が活発になり、企業誘致や産学連携を推進、人口二百万人を超える広域的な都市圏が形成されている。
中でも人口二十八万人ほどのマルメの発展は特筆される。コペンハーゲンにのみ込まれることなく、むしろ仕事や生活の場を広げて、都市の振興につなげている。
瀬戸大橋は開通して二十年もたつのに、割高な通行料金がネックになっている。オーレスン橋も通行料金は瀬戸大橋と同じ水準でやはり高さが問題になったが、定期券など多様な割引制度を導入しているという。瀬戸大橋の料金引き下げの参考になるだろう。
姉妹縁組は、オーレスン橋の経済波及効果に着目した岡山経済同友会が〇四年に視察団を派遣したことが契機となった。香川経済同友会も呼応し、北欧との交流事業を推進する実行委員会を両同友会が中心になって立ち上げ、両県の自治体や経済団体も参加した。岡山と香川の連携機運が一段と盛り上がった。
香川県の発展がなければ、岡山県の発展は望めないし、逆もしかりだ。両県の一体的な発展を進めていくためにも、オーレスン橋をモデルに、瀬戸大橋を生かした広域地域戦略を打ち出していくことが必要だ。
(2008年5月24日掲載)