2008年05月25日 更新

【大相撲】琴欧洲の綱とり挑戦に朝青龍「甘いもんじゃない」

欧州人力士として初めてとなる優勝。初優勝の琴欧洲(中央)の喜びも2倍、タイも2尾! 前列左は佐渡ケ嶽親方。父・ステファンさん(後列右から2人目)の目も潤んだ(撮影・千村安雄)

欧州人力士として初めてとなる優勝。初優勝の琴欧洲(中央)の喜びも2倍、タイも2尾! 前列左は佐渡ケ嶽親方。父・ステファンさん(後列右から2人目)の目も潤んだ(撮影・千村安雄)

 夏場所14日目(24日、東京・両国国技館、観衆=9000)モンゴル出身の朝青龍(27)、白鵬(23)の2横綱が、琴欧洲(25)に賜杯を奪われた。平成18年春場所から13場所連続で2人で優勝を分け合ってきただけに、屈辱に打ちのめされた横綱は、名古屋場所(7月13日、愛知県体育館)で琴欧洲が初挑戦する綱とりでは、壁となって立ちはだかる。

 牙城(がじょう)が崩れた。モンゴル勢の“賜杯独占”にストップをかけられた朝青龍は琴光喜を下し、連敗を3で止めて10勝としたが、「(琴欧洲の優勝に)めでたいことを言いたいけど、(自分も)負けてしまったからな。初優勝はうれしいだろうな」と、素直な祝福の言葉はなかった。

 白鵬とともに、2横綱にとっては屈辱の場所だ。平成18年春場所から13場所連続で朝青龍、白鵬のいずれかが賜杯を手にしてきた。互いにライバルだが、「モンゴル」の勢力を強烈にアピールしてきた。だが、11日目に朝青龍が、12日目には白鵬がそれぞれ琴欧洲に敗れ、賜杯争いから脱落。結局、引き立て役に甘んじた。3日ぶりの白星で11勝目を挙げた白鵬は「(琴欧洲は)よくやったってことだね」と素っけなかった。

 2横綱はそろって場所中にアクシデントに見舞われてしまった。朝青龍は初日の稀勢の里に黒星を喫した後に腰痛が発症。白鵬は10日目の安馬戦で左足首をねんざした。白鵬は「やった後は歩けなかった。(V逸を)足のせいにしたくないけど…」と悔しさをにじませた。

 名古屋場所では、琴欧洲が初めて綱とりに挑戦する。朝青龍は「(横綱昇進は)そんな甘いもんじゃないよ」と不敵な言葉を口にした。白鵬も「自分としてはやるだけ」と言い切った。先場所まで2場所連続で、千秋楽の相星決戦で優勝を争った両者。賜杯、主役の座を奪われた横綱が故障を治し、欧州勢で初優勝を飾った琴欧洲の壁となって立ちはだかる。

(伊藤隆)

■横綱昇進には

 横綱審議委員会の内規には、大関で2場所連続優勝または優勝に準ずる成績が求められる。第63代横綱旭富士(現伊勢ケ浜親方)から、現在の第69代横綱白鵬まで7人連続で2連続優勝で昇進している

★内館委員は昇進に否定的

 日本相撲協会の諮問機関である横綱審議委員会(横審)の内館牧子委員=脚本家=は24日、初優勝した大関琴欧洲の来場所の綱とりについて、「カド番脱出ですからね。2場所連続優勝で昇進というのは、数字上はそうだが、盤石な横綱になってもらえるかを考えるとどうか」と否定的な見解を示した。また、綱とりについて、北の湖理事長(元横綱)は「あした、まだ一番残っている」と明言を避けた。

◆北の湖理事長

「琴欧洲は13勝で優勝を決めたことは評価できる。今場所は常に正攻法で最高の相撲。今場所のような取り口を続ければ、まだまだ優勝を積み重ねると思う。さらに上を狙う気持ちで頑張ってほしい」

◆放駒審判部長(元大関魁傑)

「(琴欧洲は)いい立ち合いをしたよね。今場所は相撲が力強かった。千秋楽もあるのでそういう(来場所の綱とりの)話はしませんよ」

◆ヒュー・リチャードソン欧州連合(EU)駐日欧州委員会代表部大使

「欧州出身力士として初めて大関に昇進し、苦労や試練を克服して優勝したことをうれしく思う。さらなる努力と精進で上を目指してほしい」

◆ブラゴベスト・センドク・ブルガリア駐日大使

「私たちブルガリア国民、琴欧洲関も忍耐と努力の大切さを大相撲から学んだ。国民の誇りです。健康な心と体を保ち、横綱を目指してほしい」

★仏通信社も伝える

 琴欧洲の初優勝を、フランスのAFP通信も24日、東京発で「欧州出身のスモウレスラーの優勝は初めて」と伝えた。ブルガリア国旗を振って応援する父の前で優勝を決め、「ついにやった」と語ったなどとリポート。甘いマスクが「角界のベッカム」と呼ばれていることや、外国出身力士のデータも紹介した。