先代佐渡ヶ嶽親方の肖像画の前で握手する現佐渡ヶ嶽親方と琴欧洲(千葉県松戸市の佐渡ヶ嶽部屋で) |
大相撲夏場所14日目の24日、念願の初優勝を決めた琴欧洲(25)(佐渡ヶ嶽部屋)。母国のブルガリアから応援に駆けつけた父ステファンさん(52)に晴れ姿を見せ、昨年8月に66歳で他界した先代佐渡ヶ嶽親方(元横綱琴桜)にも最高の恩返しをした。
両国国技館の升席でブルガリアの小旗が躍った。優勝が決まった直後、立ち上がって大きな体を揺すりながら館内の祝福に応えたステファンさんは、「頭が真っ白だ」と喜び、支度部屋で琴欧洲と抱き合った。
大関カド番の場所で快進撃を続けるさなか、師匠の佐渡ヶ嶽親方(元関脇琴ノ若)は、「先代の写真が笑っているように見える」と繰り返した。名伯楽と言われた先代師匠は、琴欧洲の育ての親。厳しい指導で知られる一方、来日当初、ちゃんこが苦手だった大関に兄弟子の見ていないところで、こっそりとパンを差し出す温かい人だった。
そんな先代の遺影に向かって大関は毎朝、手を合わせる。史上最速(幕下付け出しを除く)の所要19場所で大関まで駆け上がったが、右ひざのけがに加え、ここ一番の精神的な弱さで、2年以上も低迷した。「足が動けばオレが直接、教えてあげたいよ……」。けいこ場で雷を落とされることもしばしばだったが、肩を落として歩く大関の姿に足が不自由だった先代は、いつも気をもんでいた。「(優勝を)やっとつかみとった」と、笑顔で胸を張った琴欧洲。「感謝しています」と、日本の父にも初優勝をささげた。
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